握力強化で手にした“特異球質” 都大会準V…最速140キロ中学生が追求する「回転効率」

更新日:2026.06.10

文:磯田健太郎 / Kentaro Isoda

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東京都大会で準V…駿台学園中の左腕・藤森一生が見せた「柔と剛」の投球術

「全日本少年軟式野球東京都大会」は6日、大田スタジアムで決勝戦が行われ、駿台学園中は延長8回タイブレークの末に上一色中に1-2で敗れ、優勝を逃した。主将としてチームを牽引した藤森一生(かずき)投手は4回途中から救援登板。8回に無念のサヨナラ負けを喫したものの、7回まで無安打投球を見せた。光ったのが伸びのある直球と、入学以来磨き続けてきたスライダーを生かした投球術だ。

 0-0で迎えた4回1死、西村晴樹監督がベンチから飛び出し、一塁で先発出場していた藤森をマウンドへ送った。イニング途中の難しい場面だったが、2人の打者を直球、スライダー、フォークを交えて打ち取った。その後もテンポ良く打ち取る投球で、7回まで相手打線に1本の安打も許さず、二塁さえ踏ませなかった。

 小学6年生時点で120キロ台を計測し、現在は最速140キロと、全国でもトップレベルの左腕へと着々と進化しつつあるが、求めてきたのはスピードガンの数字だけでなく、直球そのものの“質”だと話す。「一番は、球速以上のボールを目指してるというか、回転効率の良さやホームベース上での強いボールを意識していて、そのために握力を鍛えました」。

 投手は、疲労で握力が弱まり、指先でボールを制御できなくなることで制球を乱すことが多い。下級生の頃から上級生と対戦してきた藤森は、終盤でのパワー不足を特に感じていたという。そこで、最後にボールを押し込む人差し指と中指を中心に握力を強化。30キロ後半だった左手の握力が51キロにアップすると、打者の手元で伸び上がるような独特な直球へと進化した。

 中学生活で徹底的に磨いてきた変化球はスライダー。自慢の直球があるからこそ、同じ腕の振り、ボールの軌道に見えるような、カウント球にも決め球にもなる“絶対的なボール”を目指してきた。変化球にも握力強化の効果はあったようで、試合終盤でもキレや制球力は落ちず打者を料理。左打者からは空振りを奪い、右打者には手元に差し込んでゴロの山を築いた。

 西村監督は、藤森の投球スタイルを「バットに当てさせない技術がピカイチですね。無死一、二塁のピンチでポンポンと三振を取って1死一、二塁にできるのが強みだと思います」と評する。ダブルヘッダーで行われた準決勝、決勝では2試合とも救援登板。準決勝の国分寺ベースボールクラブA戦では、5回途中走者を背負った場面でマウンドに上がり、最初の打者を四球で歩かせたが、後続を断って火消しに成功した。まさに真価を発揮する投球だった。

“引っ張るキャラ”ではなくても…大きな「10」の存在感

サヨナラで敗れマウンドに崩れ落ちた藤森【写真:磯田健太郎】

 無死一、二塁で始まる延長タイブレーク。駿台学園中は8回表に1点挙げた。しかし、その裏に失策が絡み無死満塁とされると、内野ゴロで1点を返され、最後は適時打を浴びサヨナラ負け。空振りを奪いつづけた直球が、1球だけ甘くなった。

 この敗戦で、8月に横浜スタジアムで行われる「第43回全日本少年軟式野球大会 ENEOSトーナメント」出場が絶たれた。チームの目標としていただけに、試合後は藤森だけでなく多くの選手がグラウンドに崩れ落ちた。

 一方で、試合後のミーティングや挨拶では表情を変え、主将としての役割を全うした。西村監督は「自分の調子が悪くても、どんな時もチームを明るくしてくれました」と、一人の人間としても大きく成長したと話した。

 駿台学園中は、8月に島根県で開催される「第48回全国中学校軟式野球大会」予選へ駒を進める。このチームでの戦いはまだ終わっていないどころか、中学のうちに最速145キロに辿り着く目標もある。「あんまりみんなを引っ張るキャラではないですし……結果を残すことはできなかったですが、キャプテンとしての姿勢は見せられたのかなと思っています」。マウンドに君臨する10番の存在感は、まだまだ大きくなりそうだ。

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