“高校BIG4”の投げ方は「少年野球の手本」 並進運動、骨盤…球速アップできる理由

文:間淳 / Jun Aida

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米国式アカデミーコーチが高校BIG4を分析…横浜・織田を絶賛

 夏の甲子園出場をかけた熱い戦いが、全国各地で繰り広げられた。今年の高校3年生には将来を期待される投手が多く、特に横浜・織田翔希、沖縄尚学・末吉良丞、聖隷クリストファー(静岡)・高部陸、山梨学院・菰田陽生の「BIG4」と呼ばれる4人の投手への注目度が高かった。そこで、名古屋市で米国式野球アカデミー「Be an Elite」を運営する松本憲明さんが、4投手のピッチングを分析。どの投手にも、小・中学生の球速アップにつながる手本となる動きがあるという。

 現役時代は最速151キロの投手で、引退後は米国で学んだ知識と経験を生かした野球アカデミーを立ち上げた松本さんは、BIG4はそれぞれ優れた体の使い方をしていると指摘する。中でも、「小・中学生が最も手本にしてほしい投手」として名前を挙げたのが、最速157キロ右腕の横浜・織田だった。松本さんは「右投手の見本。無駄な動きがなく、フォームも安定しています」と評する。

 体の使い方で、まず目を引くのが下半身の動き。踏み込んだ足が着地し、リリースにかけて骨盤が落ちる投手が高校生には目立つ中、織田投手は骨盤を高い位置に保てているという。松本さんが解説する。

「球速が出ない高校生の多くは、骨盤が落ちて軸足でプレートを強く押し込めず、体が沈み込んで肘が抜ける傾向にあります。それに対し、織田投手は骨盤の位置や重心が高いため、球を上から強く叩く形で投げています。また、体幹主導で回旋できているので、腕を振るのではなく、“自然と振られる”動きになっています。それによって腕にしなりが生まれて、球速が出ています」

横浜・織田翔希【写真:加治屋友輝】

 上半身も理想的な動きができている。織田は左足が着地した際に上半身が開かず、ユニホームの胸に入っている「YOKOHAMA」の文字が三塁ベースを向いている。これは並進運動で下半身の力を捕手の方に向けながらも、上半身は反対方向にひねる“捻転の動き”ができている証しで、より大きなエネルギーを生み出せるという。また、トップの形を長くキープできることから、打者は腕や球が見えづらく、タイミングを取りにくい。

沖縄と静岡の左腕は傾斜に沿った並進運動が抜群

沖縄尚学・末吉良丞【写真:加治屋友輝】

 この捻転が織田以上に上手なのが、沖縄尚学の左腕・末吉だという。末吉は右肩を回旋した時にも左腕はトップの位置にあり、胸は一塁方向を向いている。松本さんは「打者からすると左腕が全く出てこないで、急に球が来る感覚がすると思います。マウンドの傾斜に沿って骨盤が落ち、並進運動のスピードが速くてスムーズです。この並進運動の速さが、球速にもつながっています」と分析する。

 小・中学生で球速が出ていても打たれてしまう投手は、テークバックが打者から見えやすい投げ方をしているケースが多いという。体の開きが早いことなどが原因で、打者はタイミングを取りやすく、球に力も伝わりにくい。

 また、末吉の特徴は、肩甲骨周りや胸郭の可動性が高いところにもある。大きな筋肉を使いながら腕を加速させ、さらに体幹を倒して打者に近いところでリリースしている。松本さんは「球速を出せるだけではなく、数字以上のスピードを打者に感じさせることができます。ただ、真似をするのは難しい投げ方です」と話す。

聖隷クリストファー・高部陸【写真:加治屋友輝】

 聖隷クリストファーの左腕・高部も、傾斜に沿った並進運動や捻転の動きが優れているという。そして、身長175センチながらも今夏の静岡大会で150キロを連発した理由は、両足の使い方にもあると松本さんは語る。

「軸足となる左足でプレートを強く蹴ることができているため、並進運動のスピードを出せています。プレートは壁のような役割なので蹴る力が強いほど、大きなエネルギーを生み出せます。自転車に乗り、ペダルをこがずに地面を足で蹴って前に進むイメージです。それから、着地した右足でブレーキをかけるブロッキングの動きも上手くできているので、エネルギーをロスせず上半身や腕に伝えられています」

菰田は体格生かした体重移動…最速152キロは“成長過程”

山梨学院・菰田陽生【写真:加治屋友輝】

 山梨大会で敗れたものの、打者との二刀流でも話題を呼んだ山梨学院・菰田は、速球の最速は152キロを誇る。身長194センチ、体重100キロの恵まれた体格がアドバンテージになっているのは間違いないが、その体を生かした投げ方ができていると松本さんは指摘する。

「センター方向から投球フォームを見ると、軸足が真っすぐ捕手方向に倒れています。正しい方向に力を加えられているので、背の高さや体重を生かしてスピードを出せています。体重移動する時、股関節に体重を乗せられているところも基本に忠実です」

 菰田は現状でも超高校級だが、まだ伸びしろがあるという。松本さんは「着地した時に左足の膝が90度近く曲がっています。膝が曲がりすぎると地面反力が小さくなってしまいます。ここを改善できれば、さらに球速は上がると思います」と期待を寄せる。

 並進運動のスピードや捻転、軸足の蹴り方や体重移動のベクトル。球速が速い投手には理由があり、そこには小・中学生にとっての学びもある。

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