“自己流筋トレ”より効果的? 球速向上・飛距離アップへ…回転運動で鍛える「耳の奥」

文:間淳 / Jun Aida

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プロトレーナー・船木永登氏が警鐘「ウエートでパフォーマンス落とす選手多い」

 目的や方法が正しくなければ、時間をかけても期待する効果を得るのは難しい。プロトレーナーの船木永登さんは、ウエートトレーニングの誤解や注意点を指摘する。筋力の強化は決してパフォーマンスアップに直結するわけではなく、一見無関係な側転の動きを取り入れて球速や打球の飛距離がアップした選手もいる。

 船木さんは都内に運営するジムで、小学生からプロまで幅広いレベルの選手をサポートしている。ジムにはトレーニング器具が並ぶなど、プロトレーナーとしてウエートトレーニングの大切さを理解している。ただ、方法や目的を誤っている選手が少なくないと話す。筋力を鍛えるだけでは、野球の技術やパフォーマンス向上にはつながらないという。

「ウエートの仕方に問題があって伸びない選手もいますが、そもそも体のバランスが悪いままトレーニングをしているケースが多いです。出力を上げるための体の動きが身に付いていなければ、筋力を生かせません。球速アップを目的に始めたはずが、いつの間にか筋力をつけるだけのウエートになっている選手もいます」

 船木さんは筋力を球速や飛距離の向上につなげるため、選手には少なくとも「立方骨」と「前庭」のトレーニングを取り入れるように勧める。立方骨は足の薬指の小指を結ぶ骨で、体のバランスを取って上半身に力を伝える上で重要な役割を担う。前庭は耳の奥にあるバランス感覚を司る器官で、運動機能に直結する。船木さんは選手に立方骨や前庭の重要さを説明しながら、トレーニングメニューを組み立てている。

大谷やジャッジは「正しいトレーニングで筋力をつけている」

プロトレーナーの船木永登氏【写真:伊藤賢汰】

 野球界でウエートトレーニングを重視する風潮は、ドジャース・大谷翔平投手をはじめとするメジャーリーガーの影響が大きい。筋力をつけて体を大きくすることで、結果を出しているととらえられているからだ。

 しかし、船木さんは「ウエートは大事ですが、順番や押さえるべきポイントがあります。ウエートによって動きが悪くなり、パフォーマンスが落ちている選手をたくさん見てきました」と警鐘を鳴らす。自己流でトレーニングして筋肉量が増えたとしても、体が硬くなったり、可動域が狭くなったりして、野球選手としては逆効果になるケースがあるという。

「大谷選手も(ヤンキースの)アーロン・ジャッジ選手も体の大きさが注目されていますが、体の柔らかさを損なわないように筋肉をつけています。体の使い方や力の出し方が上手で、正しいトレーニングで筋力をつけているので動きが美しく見えます」

 船木さんのもとを訪れた選手の中には、筋力を強化してもパフォーマンスが上がらず、前庭のトレーニングを取り入れて一気に成長した人もいる。メニューの1つは側転。側転は前庭が左右に振られてバランス感覚が不安定な状態から動きを止めるため、姿勢維持の力を鍛える効果があるという。

 投手のリリースや打者のインパクトのように瞬間的に最大限の力を出すには、動きを一度止めたり、緩めたりしてから加速する必要がある。その強化に側転は最適で、体の動かし方が改善すると、筋力がパフォーマンスにつながってくる。ウエートトレーニングは野球で結果を出す手段の1つとなる。ただ、依存しすると、時間をかけただけの成果を得られない悩みの種になりかねない。

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