野球は「日本人の価値を上げられる」 大谷の同郷コーチが挑む、AI時代の“スター誕生”

菊池雄星がプロデュースする「K.O.H」のピッチングコーチ・河内山拓樹さん
「日本人の価値を上げる」。菊池雄星投手(エンゼルス)がプロデュースした岩手県花巻市の屋内野球施設「King of the Hill」(K.O.H)でピッチングコーチを務める河内山拓樹さんは、壮大な野望を思い描いている。奥州市出身で、今をときめく大谷翔平投手(ドジャース)は同郷で同い年。菊池や佐々木朗希投手(ドジャース)も岩手出身の現役メジャーリーガーだ。地元から世界へ羽ばたいた同世代のスターが多数いることを「アドバンテージ」と捉え、岩手、東北から野球を発信し続ける。
「日本人が何人も世界で活躍している今、野球というスポーツが一番日本人の価値を上げられる確率が高いと思っています。野球人口が減るのは子ども自体が減っているので仕方のないことですが、その分、一人にかける時間は長くなる。その時間を質の良いものにすれば、地方からでももっと良い選手が出てくるはず。そうすれば野球の価値が上がって、日本人の価値も上がる。岩手、東北からその価値を出すことには大きな意味があるんです」
河内山さんは岩谷堂高、岩手県立大と進み、大学時代は野球部に所属せずにクラブチームのオール江刺でプレーした。その後、企業チームのJR盛岡を経て渡米し、独立リーグの堺シュライクスで現役を終えた。異色の球歴を歩んだ後は約3年間、都内で野球の指導を行っていたが、一昨年に転機が訪れる。
指導者になって間もない頃、地元の岩手で小学生を指導する機会があった。「能力は高いのですが、東京と比べると(選手が)目立つ場所も(野球の知識を)知れる環境も少ない。東京の子と同じかそれ以上の能力を持っているのに、知らないだけで損をしているように見えたんです」。技術向上にお金をかける文化も当時は根付いておらず、そんな岩手の現状を変えるべく、「いずれは東北を拠点にしたい」との思いが芽生えた。そんな矢先、2024年にK.O.Hが誕生した。
崩さない指導者としてのスタンス「主役は選手。選手が第一」

中学3年時に甲子園での快進撃を目の当たりにし、「1ファン」になったという菊池との面接を経て、K.O.Hでの指導者人生がスタート。まだまだ道半ばだが、「日本人の価値を上げる」という目標に向かって日々試行錯誤を重ねている。
「主役は選手。選手が第一。そこはぶらさずに、選手が良くなるために必要なことを学び、必要な情報を得て、必要なことをするというスタンスです」。AIに仕事を奪われる未来が待っているからこそ、飲み込まれずに生き残るために「思考」を高め続けなければならない。野球を通じてそれをサポートし、世界で活躍できる選手を育成することで、野球という分野にとどまることなく日本人の価値を上げることができる。「俺が育てた」「俺が教えた」。そんな自己満足をしたいわけではない。
かつては野球の”弱小県”だった岩手のイメージを菊池が大きく変え、大谷、佐々木が後に続いた。世界的スターを続々輩出する岩手で生まれ育ち、豊富な経験を引っ提げて故郷に戻ってきた河内山さんの言葉は、大袈裟には聞こえない。岩手、東北からどんな「価値」が生まれるか楽しみだ。
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