小学生が日本一を目指すのは正解か 親の怒号で萎縮も…スポ少が志す“全国大会改革”

全国スポ少は昨年から「エンジョイ!軟式野球フェスティバル」と名称変更
少年野球には“勝ち負け”にとどまらない、大切なことがある。公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)が主催してきた「全国スポーツ少年団軟式野球交流大会」(全国スポ少)は、昨年から「エンジョイ!軟式野球フェスティバル」と大会名称を変更。今年は岩手県を舞台に8月8日〜11日の日程で開催される。1979年から数えて48回の歴史があり、小学生の憧れの1つである舞台をモデルチェンジした狙いとは。そして、現場の指導者や保護者からの反応とは……。
全国スポ少は、全日本軟式野球連盟が主催する「高円宮賜杯 全日本学童軟式野球大会 マクドナルド・トーナメント」と並んで、子どもたちが目指す夏の“2大大会”の1つと認識されてきた。それが昨年、「日本一を決める全国大会」とは一線を画し、青少年の心身育成の場という意義を再確認するため、「エンジョイ!〜」という名称変更などの“改革”に踏み切った。
「勝利を目指すことは大切ですが、勝ちのみを意識している指導者さんも多い。勝ち負けだけでない、もっと大切なことがあるということを伝えたく、去年から変更しました」
JSPO副会長で、日本スポーツ少年団本部長を務める益子直美さんは、7月15日に行われた会見で、そう狙いを語った。改革は大会名だけにとどまらない。「リエントリー制度」や敗退チーム同士の交流戦によって、より多くの選手の出場機会を確保。また、指導者に向けてはアンガーマネジメント講習も実施されている。
試合後には、両チームの選手同士で戦いを振り返り、仲間意識を深め合う「アフターマッチファンクション」も導入された。「『あの球は凄かった』『あのけん制球は素晴らしかった』と称え合って、負けて落ち込んでいた選手も笑顔で終わることができる。野球がもっと好きになれる取り組みだなと感じます」と益子さんは説明する。
現場での反応はどうだったのか。「『全国1位を狙う大会じゃなくなったのか』という声も多少ありましたが、『すごく良い』『賛同します』という声や、『待ってました』とおっしゃってくれる指導者もいらっしゃって、本当にありがたかったです」(益子さん)。JSPOとしても効果を感じている様子だ。
鳴り物の応援の制限で「選手の声が良く聞こえる」の意見も

大会前の周知もあり、ベンチからの「威圧の罵声」はなくなってきているが、別の課題もある。スタンドからの応援だ。「エンジョイ!〜」はバレーボール、剣道でも実施されているが、指導者・保護者に「スポーツを通じて子どもたちに何を学んでもらいたいか」と全競技でアンケートをとったところ、特にバレーボールにおいて「試合で勝つこと」と答える保護者の割合が高かったという。
そのデータを象徴するように、バレーボールでは試合が白熱すると、観客席から激しい怒号が飛び、選手が萎縮してしまうことがあるという。屋外の軟式野球でも不快なスタンドからの罵声はよくあるが、屋内スポーツであれば館内への反響が特に大きく、選手への影響は計り知れない。
そこで、「エンジョイ!〜」では軟式野球も含め、鳴り物禁止、選手の動揺を誘う大声の禁止など、観客席の改革にもトライしている。元女子バレーボールのトップ選手で、「監督が怒ってはいけない大会」も主催する益子さんは、「(礼節を重んじる)剣道の試合の雰囲気が素晴らしく、それを参考にさせてもらいました。鳴り物があった方が雰囲気が出るという意見はありますが、プレーする選手たちの声が直接聞こえてきて良いというコメントもいただいています」と手応えを得ている。

軟式野球は真夏の開催となるため、熱中症対策や落雷対策にも細心の注意を払う。試合は気温が高い時間帯を避け、午前中に実施。開始前と試合中にWBGT(暑さ指数)を測定し、31度以上の場合は試合を始めず、夕方への移行や翌日への継続にするなどのレギュレーションを設けている。また、今年は岩手開催のため、スプレー配備や、食べ物を球場外に放置しないなどの「クマ対策」も講じられる。
数々の改革はあれども全国大会であることは変わらず、出場選手のレベルも高い。ハイレベルな切磋琢磨の中で、スポーツマンシップをいかに醸成するか。「エンジョイ!〜」は選手だけでなく指導者も、そして保護者も学ぶ場になるといえそうだ。今年は16チームが参加し、4日間にわたって熱戦が繰り広げられる。
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