「試合どうだった?」が招く“険悪な空気” 苛立つ息子、知りたがる母…野球一家の心理戦

不機嫌な息子の言葉を待つのは、“一球”を待つ打者の心境
子どもが野球に打ち込む家庭で、「つい口を出してしまう」と悩む保護者は多いのではないでしょうか。3人の野球少年の母である筆者もその一人。不機嫌な三男を心配してあれこれ聞いてしまう中、頼れる長男に橋渡しをお願いしたところ、思いがけない「母攻略法」が発覚して……。良かれと思って声をかける親心と、それを巧みにかわす子どもたち。「見守る」ことの本当の意味に気づかされるエピソードをお届けします。
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先日、First-Pitchのポッドキャスト番組「野球ママへの応援歌」で、「つい先回りして口を出してしまう親心」という話題が出たとき、「あれこれ聞きたくなるのは、私も同じだな」と、わが身を振り返った。
3人の子どもが野球に励むわが家でも、そんな親子の“心理戦”は日常茶飯事だ。
頑張ってほしいから、ついつい口を出してしまう。でも、本当は自分で考え、自分で壁を乗り越えてほしい。その狭間で揺れる母の気持ちをよそに、息子たちの驚くべき“母攻略法”に気づかされた、ほろ苦いエピソードを思い出した。
ある週末の少年野球。泥だらけのユニホームで帰ってきた三男は、玄関を開けた瞬間から不機嫌オーラ全開だ。自分から何も言わない三男を前に、私は「今日の試合どうだったの?」なんて声をかけてしまう。けれど、そんな言葉は息子の耳には入らない。いや、耳に入っていても答えたくないのだろう。そんな時は、揺れるわが子を黙って見守る忍耐力が、親には求められる。
しかし、頭ではわかっていても、沈んだ顔の息子につい「どうしたの? 何かあった?」と立て続けに声をかけてしまう。よく考えると、それは子どものためではなく、親自身の不安を静めるためだったりする。何も言わない息子の原因を知りたいという、親側の欲求なのだ。
「本人が言いたいタイミングまで黙って待つ」。言葉にすると簡単だが、これが本当に難しい。親にとって、子どものタイミングをひたすら待つ行為は、バットを振るタイミングを見極めながら、ただひたすら“一球”を待つ打者のような心境だ。
親が一歩引けば、子どもは案外、自分の力で前に進んでいく
どうしたものかと頭を悩ませていた私は、年の離れた長男に助けを求めた。ふてくされる三男にも、兄の言葉なら届くだろうと任せて部屋を出た……が、やっぱり気になる。私はドアを閉めたところでこっそり聞き耳を立てていた。
昔から聞き分けの良いタイプだった長男は、三男にも優しく寄り添いながら話を聞いている。「さすが!」と感心した次の瞬間だった。突如、会話の矛先が私に向いた。
「お母さんはさ、いろいろ言ってくるだろ。そこでお前がいちいち突っかかるから長くなるんだよ。『うんうん』って聞いておけばそのうち終わるから」
……ん? ちょっと待て。長男がいつも見せていたあの殊勝な態度は、しっかり聞いていたのではなく、ただ聞き流していただけだったということ? 衝撃とともに、これまでの姿が重なり、妙に納得してしまった。
確かに私は、黙って聞くタイプの長男には、勝手に満足し早々に話を終えることが多かった。しかし当の本人は「親が満足するまで話をさせてあげよう」と、私に合わせていただけだったのだ。完全に攻略されていたのである。私はドアの前で苦笑するしかなかった。
そんなエピソードを思い出しつつ、改めて「見守る」とは、放っておくことではなく、子どもの力を信じて一歩引くことなのだと気づく。親が一歩引けば、子どもは案外、自分の力でちゃんと前に進んでいくものだ。親が思っている以上に、子どもはちゃんと考えている。そしてわが家では、母が思っている以上に、息子たちは母の扱いを心得ている……。
〇石井愛子(いしい・あいこ)情報・ニュース番組から、Jリーグのピッチリポーターや千葉ロッテマリーンズの応援番組など、フリーアナウンサーとして幅広く活動。ライターとしても、スポーツや子育て支援分野を中心に取材、原稿執筆、イベント企画運営などを担当。五輪特設サイトでの執筆や、「bjリーグ」オフィシャルライターのほか、スポーツ関連書籍の執筆を手掛ける。現在は野球育成解決サイト「First-Pitch」での執筆や、同サイトのポッドキャスト番組「野球ママへの応援歌」のパーソナリティーも務める。
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