「片膝つき」の捕手は楽してる? 学童野球の喫緊課題…ミスを怖がる“厳しすぎ指導”

「教えるより褒める」…緑川大陸氏が説く捕手を育てる指導者の役割
指導者や保護者の言葉や心構えが、捕手の育成に大きく影響する。野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」が9月30日、オンラインイベント「キャッチャー育成講座」を開催。捕手指導を専門にするキャッチャーコーチの緑川大陸さんは、小・中学生の捕手を育てる上で、大人による環境づくりの重要性を説いた。
学童野球は2027年シーズン、1つの改革に取り組む。それは、同じ試合で投手と捕手の兼任を禁止するルールの新設だ。体の成長スピードに差が出やすい小学生の時期は、チームで特定の選手が投手と捕手を任されるケースが多い。ただ、投手と捕手は他のポジションと比べて肩や肘、腰への負担が大きいことから、怪我予防などを目的に同じ試合での入れ替えが認められなくなる。
ルール改正によって、捕手育成を重視したり、新たに捕手を任される選手が増えたりするチームが多くなると予想される。一方、捕手の指導に課題や苦手意識を持っている監督やコーチは少なくないだろう。捕手育成に自信がない人たちに向け、オンラインイベントで講師を務めた緑川さんは、最も大切なことに「環境」を挙げた。
「選手が捕手を嫌いになる環境をつくらないでほしいです。チームで指導する方々には、技術以前に捕手が育つ環境づくりを意識してほしいと思っています」
緑川さんは捕手指導を専門とし、小学生からプロまで幅広くサポートしている。その中で、ジュニア世代の捕手に対して、ミスを指摘し過ぎる指導者が少なくないと感じている。「扇の要」と呼ばれる捕手は役割が多く、期待の大きさもあって、指導者が厳しく接しがちなポジションと言える。まだ経験が浅い捕手にもブロッキングや送球、配球や指示出しなどを求めてしまう指導者もいる。緑川さんは、そうした言動が捕手に与える影響は大きいと指摘する。
「選手を見ていると、ミスをしないように気にしすぎていると感じます。指導者の方々には、まずは何かを教える意識よりも、選手が上手くいったところを見つけて褒めてほしいです。叱らずに捕手とコミュニケーションを取って一緒に悩む。その悩みが分かると、選手の成長をともに喜べる関係性ができてくるはずです」
選手が悩む「膝をつくな」の指摘…緑川氏が導き出した答えは

オンラインイベントでは参加者からの質問に緑川さんが答える時間も設けられた。「膝をつくなと言う指導者が多いのですが、それに対する返答を教えてください」。MLBでは多くのキャッチャーが片膝を地面について構えている。緑川さんは、次のように回答した。
「私が指導している選手の中にも、チームで同じ指摘をされる悩みが多いです。そういう指導者にどうやったら納得してもらえるか考えた結果、『健康のためにやっている』と答えるのが一番良いと気付きました」
緑川さんが調べたところ、地面に膝をつかない捕球姿勢は、膝をつく場合と比べて膝や腰に7倍の負荷がかかっているという。つまり、片膝をついた構え方の方が体への負担は小さく「健康的」と言える。緑川さんが説明する。
「膝をついた姿勢を注意する理由には、『楽をしている』という指導者の考え方があります。そういう指導者には、体への負担を減らし、膝や腰を怪我しないように膝をついていると伝えてください。そして、膝をついてもブロッキングはできますし、送球もできると説明すれば、否定される余地はありません。指導者も選手に怪我をされたら困るわけですから」
捕手の守備力はチームの勝敗を左右するケースもある。特に小・中学生のカテゴリーでは、その傾向は表れやすい。求める役割が多いからこそ要求は高くなり、指導者や保護者は厳しく接してしまう。「捕手に楽しさや喜びを感じられる環境を大人につくってほしいです」と緑川さん。大人の役割は、知識や技術を伝えるだけではない。
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