打撃技術はたった1ページ テクニックより暴力防止優先…新時代の指導者になる「1日30分」

文:長久保由治 / Yuji Nagakubo

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「学ぶ指導者」プロジェクト第2回…一番難しくて大切な「教えぬ勇気」

「子どもたちに野球を教えたい」。その一心でグラウンドに立ってきたけれど、ふと自分の教え方に自信が持てなくなることがあります。最新の理論はどうなっているのか、自分の経験はもう古いのか。そんなモヤモヤを抱える少年野球のコーチたちに、全日本野球協会(BFJ)の前事務局長・長久保由治さんが“指導者資格取得のリアル”を綴ります。保護者コーチとして思い悩むYさんとの対話から、画面の向こうに広がる、指導者の「第一歩」を見つめます。

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「まずは、入り口の扉を叩くところから始めましょうか」。パパコーチとして思い悩み、相談に来たYさんに、私はパソコンの画面を見せながら、そう切り出しました。

「資格取得のために、どこかの会場に数日間詰め込まれる」といったハードルは、もう過去のものです。現在は「Play BB members」というサイトでの会員登録から始まり、オンラインで受講も資格登録も完結することができます。全日本軟式野球連盟(JSBB)ともシステムが連携されており、二重に資格を取る必要はありません。窓口が一つであることは、仕事や家庭の合間を縫って学ぶ身には大きな助けとなります。

 受講料は4000円ほどで、登録料が4年で1万円。「これを高いと見るか、先行投資と見るか」と、私はYさんに笑いかけました。

 受講料を支払って30日以内に終えないと無効になるというルールがありますが、これは「“お尻”が決まっているからこそ、集中して取り組める」という前向きな仕組みともいえます。1日30分でも進めれば終わるという合計10時間ほどの動画視聴は、着実な成長につながります。講習後の確認テストも、落とすための試験ではなく、あくまで「学び直し」のためのものです。

形を教え込むより、思い切りバットを振ってもらう…それを大人が「見守る」

(画像は協会サイトのスクリーンショット)

 しかし、本当に見てほしいのはテストの点数ではありません。

 技術論より先に学ぶのは、スポーツマンシップやコーチング、そして暴力防止や障害予防の知識です。驚くべきことに、U-12の打撃に関する項目は、テキストのわずか1ページほどしかありません。形を教え込むより、まずは思い切りバットを振ってもらう。それを大人が「見守る」。この資格は、指導者が現場で最も大切にすべき姿勢を問いかけています。

 これこそが、現代の野球界に最も求められているアップデートといえます。「教えすぎない。これが実は、指導者にとって一番難しくて、大切なことだったりします」と、私はYさんに語りました。

 自分自身のこれまでの声かけを振り返り、少し胸が痛んだというYさん。良かれと思っていたアドバイスが、子どもたちの自由な動きを止めていたのかもしれない、と。

 子どもたちが、ずっと野球を好きでいてくれるように、私たち大人は受講を通して、そのための「見守り方」を学ぶ――。自身の指導のあり方を静かに見つめ直す時間は、未来の野球界を育む尊い一歩となるはずです。

◎BFJ公認野球指導者資格についての詳細はこちら
https://baseballjapan.org/jpn/coach/official_coaching_license_03.html

〇長久保由治(ながくぼ・ゆうじ)1960年2月9日生まれ。大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。『週刊ベースボール』など野球雑誌の編集・書籍企画に25年あまり従事。2009年退社後、全日本軟式野球連盟の事務局長に就任。2018年には全日本野球協会の理事・事務局長に就任し、16年あまりにわたり中央競技団体の事務方トップとして野球の普及振興に尽力。2025年6月、任期満了で退任。現在はCreative2の野球事業アドバイザーを務める。

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