野球界の長年の弊害…“押し付け指導”をどう変える? 保護者の安心を生む「統一資格」

文:長久保由治 / Yuji Nagakubo

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「学ぶ指導者」プロジェクト第1回…なぜ今、野球界に統一資格が必要か

 少子化や競技人口の減少が進む中、少年野球の指導者へのまなざしは厳しさを増しています。成功体験に頼った強圧的な指導は通用しなくなり、ボランティアコーチが「どう教えていいかわからない」という壁に直面することも。こうした課題を解決すべく、First-Pitchでは、全日本野球協会の前事務局長として球界の変革に携わってきた長久保由治さんを案内役に、指導者が「学び続けること」の価値を皆さんとともに考えていきます。第1回は、2019年に誕生した「公認野球指導者資格」の背景にある球界の危機感と、指導者が意識を変えるべき理由について紐解きます。

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「最近の指導は、なんだか難しい……」。少年野球のグラウンドに足を運ぶと、そんな本音を漏らすパパコーチの姿をよく目にします。教えたい熱意はあるものの、何が正解かわからない。怒鳴ってはいけないと頭では理解していても、かといって黙って見ているだけでは指導にならない。そんなモヤモヤを抱えたまま、週末のグラウンドに立ち続けている人は全国に数多くいるはずです。

「Yさん、指導者にいちばん必要なことって、何だと思いますか?」。私は、現役の保護者コーチとして日々悩まれているYさんに、あえて直球の質問を投げかけてみました。Yさんは少し考え込んだ後、絞り出すように答えてくれました。「……『導く』こと、でしょうか。選手を次のステージというゴールまで連れて行ってあげるというか」。

「その通りです」と私は深く頷きました。しかし、これまでの日本の野球界は、その「導く」ことよりも、目先の技術を「教える」ことに一生懸命になりすぎていたのではないでしょうか。自らの現役時代の経験や成功体験を子どもたちに一方的に押し付け、その型にはまらない子は置いていかれる。それこそが、長年球界の弊害として指摘されてきた「勝利至上主義」の正体です。

 小・中学生のうちは個々の体格差や成長スピードの差が非常に大きいものです。いま目の前の試合で結果が出なくても、高校や大学といった先のステージで大きく化ける選手はいくらでもいます。私の言葉を聞きながら、Yさんはハッとした表情を浮かべ、ご自身の普段の指導を振り返っていました。「早く勝たせてあげたい」という大人側の焦りが、かえって子どもたちの無限の可能性を狭めてはいなかったか、と内省されていたのです。

「個々のペースをじっくりと待って、どう未来へ繋げるか。それを見守ることこそが、指導者という役割の本当の面白さではないでしょうか」。私のその一言が、Yさんの中で何かつながったようでした。「だからこそ、今、野球界全体で共通の『資格』が必要とされているのですね」と、強い眼差しで問い返してきました。

大事なのは自身を常にアップデートしていく「学び続ける姿勢」

(画像は協会サイトをスクリーンショット)

 まさにその通りです。野球界に競技団体の枠を超えた統一の資格制度ができたのは、2019年のことです。それまではプロやアマ、硬式や軟式といった団体ごとに運営は完全に独立しており、横のつながりはほとんどありませんでした。しかし、野球人口が目に見えて減っていく中で、「このままでは野球という文化自体が衰退してしまう」という強い危機感が、ついに歴史的な団体の壁を取り払う原動力となったのです。

 他競技ではすでに当たり前となっていた、年代に応じた「一貫した育成方針」。その共通言語として生まれたのが、全日本野球協会(BFJ)公認野球指導者資格です。最近では保護者の間でも「有資格者が教えているチームは安心できる」という声が確実に増えています。

 しかし、私はYさんに最後にこれだけは伝えました。資格は取得して終わりではありません。時代も、子どもたちを取り巻く環境も常に変化しています。大事なのは、資格という形を得た後も、自分自身を常にアップデートしていく「学び続ける姿勢」そのものです。

 資格とは、単なる形だけの免許証でもなければ、学びのゴールでもありません。グラウンドに立つすべての指導者が、子どもたちの輝かしい未来のために学び続けるという、静かですが力強い決意表明なのです。

◎BFJ公認野球指導者資格についての詳細はこちら
https://baseballjapan.org/jpn/coach/official_coaching_license_03.html

〇長久保由治(ながくぼ・ゆうじ)1960年2月9日生まれ。大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。『週刊ベースボール』など野球雑誌の編集・書籍企画に25年あまり従事。2009年退社後、全日本軟式野球連盟の事務局長に就任。2018年には全日本野球協会の理事・事務局長に就任し、16年あまりにわたり中央競技団体の事務方トップとして野球の普及振興に尽力。2025年6月、任期満了で退任。現在はCreative2の野球事業アドバイザーを務める。

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