
小・中学生のカテゴリーは、2029年から高反発バットの使用禁止
小・中学生のカテゴリーで2029年から、ウレタンなどの素材を使った複合バットの使用が禁止になる。バットが変われば、学童野球も変わるのか。全国制覇の経験もある滋賀県の学童野球チーム「多賀少年野球クラブ」の辻正人監督は、フェアな勝負や本格派の投手が増えると期待する。
使用禁止となるのは、ウレタンやスポンジなどの弾性体を外装に使用した高反発の複合バットで(カーボンとの複合バットは使用可能)、“飛ぶバット”とも表現される。全日本軟式野球連盟は3年間の移行期間を経て、2029年から全面禁止することを決めた。
多賀少年野球クラブでは、複合バットの使用を試合に限定している。普段の練習では年季の入った金属バットを使う。その理由を辻監督が説明する。
「複合バットのメリットを利用せずに金属バットで打つ練習をしようとしているわけではありません。複合バットは高額なので、家庭に負担がかかる買い物をさせたくないだけです。バットの性能ではなく、価格に問題があると思っています」
“飛ぶバット”は1本5万円前後で、子育て世代にとって決して安いとは言えない価格だ。孫のために祖父母が購入するケースも多い。辻監督は選手たちに「試合用にチームで1本購入するから、各自で買わなくてよい」と伝えている。
多賀少年野球クラブでは、芯を外しても飛距離を出せる複合バットの利点を生かした練習や指導をしていない。ただ、禁止されると、学童野球に変化が生まれると辻監督は予想している。
「ルール破りの変化球が増えた」のは高反発バットの影響か

期待する変化の1つは、本格派投手の増加だ。全国大会常連のチームをつくり上げた辻監督は、“飛ぶバット”を導入してからルール違反が目立つと指摘する。小学生の大会では、肩や肘への負担を考慮して変化球が認められていない。しかし、近年は全国の舞台で当たり前のように変化球を投じるチームが少なくないという。
「打ち取ったはずの打球がバットの影響で長打になり、ルール破りの変化球が増えているのだと思います。バットが金属や木製になれば、球速や制球、緩急を使った投球術を磨く投手が育ちやすくなります。バットが変われば、力勝負する本格派投手も増えるとみています」
辻監督は相手投手が変化球を投げた時は違反を指摘し、球審も投手に注意している。ただ、最近は変化が分かりやすいスライダーやカーブではなく、縦変化のフォークやチェンジアップを投じ、球審に気付かれないようにするチームもあるという。辻監督が語る。
「私が言い続けてきたこともあって、滋賀県の大会では変化球を使うチームはありません。うちのチームの選手が空振り三振しても、相手投手がストレートで真っ向勝負した結果であれば、選手も見ている側も気持ち良いですよね。一方、2ストライクから変化球を投げられて空振り三振した時、反則投球を投げさせるチームとは二度と交流させたくないです。また、変化球を投げた選手には、『卑怯なチームに所属していた選手』のレッテルが、中学に入ってもつきまとってしまうと懸念しています」
ルール違反するチームに屈しないため、辻監督は変化球にも対応できる打ち方を指導に取り入れている。ただ、複合バットが主流となっている現在の傾向を過剰に意識していない。
「複合バットを使っていたら打撃は成長しないと選手に指摘するよりも、理想のフォームを教えながら複合バットで“もっと飛ばしてみよう”という指導で良いのかなと思っています。バッテリーに対しても、バットの性能で安打になった時は、投球や攻め方は正解だったと声をかけています」
バットが変われば、打撃や戦術に少なからず影響は出る。ただ、野球が上手くなりたい選手の気持ちや、それをサポートする指導者の役割は不変だろう。
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