球速30キロ増を実現した「5種のジャンプ」 癖も“味方”に…中学強豪の投手育成論

文:磯田健太郎 / Kentaro Isoda

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全国王者・桐生第一中…球速アップの秘訣は“5種のジャンプメニュー”

 投げ込み、走り込み、フォーム改造。球速アップのためのトレーニングは日々進化するが、中学生にとっての“最適解”とはなんなのか。「文部科学大臣杯 第17回全日本少年春季軟式野球大会ENEOSトーナメント」で初優勝を収めた桐生第一中(大会当時は「桐生大附属中」、4月に校名変更)には、球速130キロ台を計測する投手が多数在籍。球速が大幅に伸びた背景には、「投げるための体づくり」があったという。

 桐生第一中投手陣を育てたのは、毎週水曜に取り組む“5種のジャンプ”だ。そのメニューを、選手たちに実演してもらった。色とりどりのミニコーンやボックスジャンプの道具を準備すると、エース・野田晟太投手(3年)が解説する。

1.片足立ちになり軸足に体重を乗せ、軸足と反対方向に跳び、逆足で着地して止まる
2.両足を揃え、ミニコーンに沿ってリズム良くジャンプで進んでいく
3.両足を揃え、ミニコーンの列に対して体を平行にし、ジャンプで進んでいく
4.両足を揃え、1回ジャンプするごとに180度回転しながら進んでいく
5.両足を揃え、2回のジャンプで360度回転しながら進んでいく

「地面からの反発をもらって高く跳んで、瞬発力をつけるのが目的です。パワーポジションを作って軸をぶらさずに腰の筋肉で支える感覚を持つことが大事です」と野田。地面反力を受け、股関節で最大化し、全身のバネにつなげ、速く強いボールを投げられる体を作り上げる。なかなか負荷の大きそうなメニューだが、選手たちは慣れた様子で取り組んでいた。

 このメニューに辿り着いたきっかけは“他競技”にあったという。曽篠大和コーチは語る。「(埼玉県)草加市の花栗中で勤めていた時に陸上部を受け持っていて、同じく陸上部を見ていた先生に教わったんです。現役の時から砲丸投げで有名な方で、その方がメディシンボールとかジャンプで一瞬の爆発力をつけるトレーニングを指導されていて。『野球にも繋がるかもな』と思っていたんです」。

 元同僚直伝のメニューを桐生第一中で実践すると、予感は的中。入学時最速105キロだった野田は半年で129キロまでアップ。「野田はメニューに取り組んで目に見えて速くなりました」。3年生になった今では最速136キロを計測する。

 捕手と投手を兼務する中村聡汰(3年)は109キロから130キロ、久保田律投手(3年)は90キロから121キロと、軒並み20キロ以上球速がアップ。中村に至っては瞬発力を鍛えたことで走力がアップし、1番打者としてチームを牽引。スタンドまで打球を届かせるパワーも身についた。

フォームは“いじらない”…「それが特徴になる」

桐生第一中・野田晟太【写真:磯田健太郎】

 桐生第一中には、投球フォームや回転数などを分析できるツールの「ラプソード」も設置。動作改善に生かすこともあるが、投手それぞれの“癖”も大事にしているという。「回転があまり綺麗じゃない子もいますけど、かえってちょっと打者の芯を外せることもありますし、その子ならではの特徴になることもありますから」と齋藤健子郎監督。

 また、曽篠コーチも「中学生に対して、我々の言葉ってすごく影響力があると思うんです。まだまだ成長段階なのにフォームを矯正しすぎて、『なんだか投げにくくて嫌だな』と思いながら投げて壊れちゃうケースは多いので」と、細心の注意を払う。

 無理に投球フォームを画一化せず、投手としての個性を残しながらも、ベースアップを図るためにトレーニングを積む。その結果、成長期も相まってアスリート能力が向上し、大幅な球速アップにつながったということだ。

 野田が年頭に立てた目標は、最速145キロ。達成まで9キロの差があるが、実現可能な目標に感じさせる。桐生第一中の投手陣が、夏に向けてさらに一回り、二回り、それ以上大きく成長し、またも全国の舞台で圧倒する姿が目に浮かぶようだった。

【実際の動画】球速アップに直結…桐生第一中が取り組む“5種のジャンプメニュー” 剛腕投手陣が実演

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