
女子中学軟式野球チーム「練馬シャイン」は“自立した個”を育む
多方面でリーダーシップを発揮する人材が巣立つのには、理由がある。東京・練馬区を中心に活動する女子中学軟式野球チーム「練馬シャイン」は、今春行われた「第27回全国高等学校女子硬式野球選抜大会」で優勝した佐久長聖の高原千鶴主将、鈴木杏奈選手の主力2人を輩出。野球以外にもダンス部の部長やバレーボール部のキャプテンなど、高校以降で活躍するOGを数多く送り出している。技術向上にとどまらない、女子選手の人間力の成長をサポートするアプローチについて橋本秀監督に話を聞いた。
2017年の創部から指揮を執る橋本監督は、日本体育大学女子野球部の学生監督から、女子野球の指導一筋。技術よりも挨拶や自己管理、そして周囲への気配り・目配りといった基本的な人間性の育成を重視し、経歴からは意外ともいえる「野球がすべてではない」という柔軟な思考の持ち主だ。
女子選手は、“チームに女子が自分一人だけ”という環境でプレーしてきた者が少なくない。橋本監督は、「練習や試合の楽しさ以上に、同じ境遇を乗り越えてきた仲間と一緒にいること自体が、彼女たちの大きな喜びになっているようです」と分析する。女子中学生は、心身ともに急激な変化を迎える時期。だからこそ、同じ境遇を乗り越えてきた同志とチームで出会い、野球という共通言語でつながることは、中学生活における精神的な安定基盤となると考えている。
現在、チームには24人の選手が所属。単なる「仲良し」の関係ではなく、相手を深く知り、気配りをし、時には厳しいことも言い合えるプロフェッショナルな仲間意識を育む環境づくりを理念として掲げている。
例えば、ウオーミングアップメニューは毎年選手が考案するが、必ず「横や縦の列が揃っているか」「隣の選手と足の高さや手の角度は同じか」ということは意識させるという。これは、常に仲間の状態や、相手の間合いを観察することを習慣化させる目的がある。この「他者への想像力」が、試合中の連係プレーや、バッターの動きを察知する観察力といった野球の技術面にも昇華されていくと考えるからだ。
欠席連絡は必ず選手自身が監督に直接電話で

自主性を育む取り組みは運営全般に及ぶ。チームでは、日々のグラウンド整備や道具の準備を含め、「大人は何もしない」状態が多い。その最たる場が、選手たちが楽しみにしている年に3回ほど行われる遠征・宿泊行事だ。
「今年は5月の千葉、7月の名古屋(西日本大会)、10月の新潟大会で遠征します。保護者の帯同は最小限。基本的には選手と指導者だけで行動します」と監督は語る。親元を離れた集団生活も、選手たちに任せることで、仲間同士で助け合わざるを得ない。「自分一人ではできないことも、仲間のサポートがあれば完遂できる」という実体験を積み重ねることで、自立した個による“強いチームづくり”を目指すことにつながっている。
指導の質を担保するのは、経験則だけではない。橋本監督が学んだスポーツ心理学や身体構造の知識を根底に、チームドクターによる最新のメディカルチェックの導入も大きく寄与している。
選手は入部時にはエコー検査を実施し、その後は約3か月ごとに、関節の可動域や体脂肪、筋肉量、柔軟性などを測定。自分の状態を数値として客観的に把握することで「どこが弱いのか」「何が不足しているのか」が明確になる。結果、選手自身が自宅でのストレッチやトレーニングについて、「やらされる練習から、自分を改善するための手段へと勝手に進化していく」とその効果を口にする。

他にも体調不良を言い出しにくい年頃の選手たちに対し、橋本監督は「甘えではなく、必要なケア」として無理をさせず休養を促すことで、心理的な安全性を確保。目先の勝利よりも、長期的な離脱や野球嫌いを防ぎ、高校・大学へと続く、息の長い選手を育てることを優先している。
「ただし、欠席の連絡は必ず選手自身が僕に直接電話で伝えるルールです。社会に出れば、自分の状況を相手に伝えるのは当たり前のこと。その一歩を、保護者にやってもらうのではなく中学生のうちに自分でできるようになってほしいです」
将来的には「世代を超えた野球教室を実現できたら嬉しい」

自主性を育む環境と、科学的チェックなどによる心身の状態の可視化といった、多角的な取り組みで選手たちの成長を支える練馬シャイン。卒業生が多方面でリーダー人材として活躍する背景には、これらの指導方針に確かな効果があることがわかる。
「もうすぐ創部10年を迎え、卒業生たちが多くの場で活躍しています。近い将来、OGの高校生が現役中学生を、現役中学生が学童を指導するような、世代を超えた野球教室を実現できたら嬉しいですね」と橋本監督は目を細める。
練馬区を代表する「照姫まつり」にちなみ、「地域・家族を思いやり可憐に華やかに練馬を照らし、楽しく!輝く!」という理念から名づけられたという、練馬シャイン。この先の人生において輝けるステージは無限にあり、誰もが自分次第で作り上げていけることを、野球を通じて教えてくれている。
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