多賀少年野球クラブ・辻監督「グラウンドに神様はいない」
狙いや目的のない行動に意味はない。今年も全国大会出場を決め、最近5年間で2度の日本一に輝いている滋賀・多賀町の小学生軟式野球チーム「多賀少年野球クラブ」の辻正人監督は、グラウンドへの挨拶や必勝祈願、時間厳守は不要と考えている。連載の第3回は、少年野球の“当たり前”に捉われない指導について語った。
ずっとやっているから――。はっきりとした理由も分からず続いている慣習は、少年野球にも多い。今年でチームを率いて34年目となる辻監督は、常に常識を疑ってきた。限られた時間は必要な行動に割くべきと考えているからだ。
「グラウンドに挨拶するのが少年野球では当たり前になっていますが、施設や設備に挨拶する必要はありません。グラウンドには神様がいるという人には『いませんよ』と伝えています。社会人で通勤する時に道路や線路に挨拶する人はいますか? 出社する際、建物に『お願いします』と言う人はいないはずです。挨拶は守衛さんにすれば良いと思います。野球でも怪我なく練習できたことに感謝するのであれば、グラウンドを整備してくれた人にお礼を伝えるべきです」
辻監督は願いを短冊に書いたり、必勝祈願したりすることにも疑問を投げかける。それだけでは目標達成にはつながらないからだという。
「甲子園に行きたい子、野球を通じて何かを身に付けたい子、色んな目標があると思います。その時、指導者や保護者は子どもたちに『じゃあ、どうする?』と聞くのが大切です。子ども自身が、どうすればいいかを考えるようになります。例えば、ショートを守りたいと思うのであれば、周りにいる見本になる選手を参考にすれば、目標に近づけます。短冊に願いを込めたり、必勝祈願をしたりしても仕方ありません。自分の目標に対して、どう動くかが大切です」
「このチームでしか学べないことを伝えるのが自分の役目」
多賀少年野球クラブでは、練習開始時間に全ての選手がそろっていない。半分ほどの時もあれば、それ以下の時もある。時間を過ぎても、選手たちは慌てる様子もなくグラウンドに現れる。少年野球では異例と言える。
「子どもたちがチームに来る目的は、野球を楽しみながら上手くなることです。私たち指導者は、その目的を達成できるように全力でサポートしています。時間や規律を守る大切さは学校で教わりますし、挨拶は保護者が教えるべきです。もちろん、礼儀や挨拶が大切なのは分かっていますが、学校教育と家庭教育の責任を、野球という社会教育に頼らないでほしい。このチームでしか学べないことを伝えるのが、自分の役目だと考えています」
少年野球の常識を覆してきた辻監督だが、知らぬ間に自分自身が当たり前を受け入れていたと選手たちに気付かされる時もある。常識に捉われず、より良い方法を考える習慣がチーム全体に根付いている証とも言える。
「野球では『しっかり投げろ!』と子ども同士で声を張り上げるのが当たり前になっています。ただ、野球をしていない人は『何で仲間にあんな言い方をするのか』と感じています。私自身も気付いていませんでした。ただ、今の6年生は、そういう言い方をしません。仲間に『ベルトより上に投げてね』『送球が低すぎると捕った後にボールを投げるのが遅くなってしまうから』と伝えます。自分たち指導者が、子どもたちや野球を経験していない保護者の方から学ぶことも多いです」
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