
「埼玉県野球協議会」設立から4年の成果と課題とは…奥村剛代表理事インタビュー
埼玉県で画期的な野球振興活動が進められている。プロ野球の埼玉西武ライオンズをはじめ、地域リーグ(ルートインBCリーグ)の埼玉武蔵ヒートベアーズ、埼玉県高野連、中学軟式野球部を管轄する埼玉県中体連(中学校体育連盟)軟式野球専門部、小・中学生硬式野球各団体、全日本女子野球連盟埼玉県支部などが横断的に大同団結し、「埼玉県野球協議会」を設立。競技人口減少など共通の問題を話し合い、野球振興イベントの共同開催にも取り組んでいる。
埼玉県野球協議会は、2022年3月に任意団体として設立され、昨年3月に一般社団法人にグレードアップされた。代表理事を務める株式会社西武ライオンズ・奥村剛代表取締役社長は「埼玉県は登録ベースで約2100チーム、約4万2000人の野球人口を抱える全国有数の“野球県”ですが、少子化や競技人口の減少という構造的な課題に対して、野球に関わる県内各団体の方々が1つのテーブルに就き、継続的に議論できる枠組みが必要だと痛感していました」と語る。
プロ野球から地域リーグ、女子野球、大学野球(埼玉県内に拠点を置く立教大、東洋大、立正大、城西大、共栄大、平成国際大の各野球部が賛助会員として入会)、高校野球、小・中学生の軟式、硬式野球各団体までが一堂に会するスタイルは、全国的にも珍しい。各団体が設立趣旨に賛同した。
多種多様な野球団体が集まるだけに、全てが順風満帆に進んだわけではない。たとえば、プロとアマは組織が別で、中学野球も硬式と軟式に分かれており、さらに中学硬式野球だけでも、リトルシニアリーグ、ボーイズリーグ、ポニーリーグ、ヤングリーグなどが並立している。
奥村代表理事は「2023年3月に任意団体として設立後、当初は2024年9月をめどに一般社団法人化するつもりでしたが、実際には2025年3月までずれ込みました」と明かし、「多様な関係者が関わる組織ですので、合意形成は想像以上に難しかったですし、みなさんが本気になって、お互い腹を割って話せる場をつくり上げるまでに、少し時間がかかったかなと思います」と説明する。
埼玉baseballフェスタと肘検診を県内各地で開催…2.2%が離断性骨軟骨炎

そんな中でも、「多様性の時代で、いろいろなスポーツ競技を楽しめる環境がある中ですが、野球は他の競技をリードする存在であってほしい。野球にはこれまで築いてきた歴史があり、未来永劫続いていってもらいたい。そういう思いは、野球関係者共通のものだと思います。まず“埼玉の子どもたちの野球は、埼玉全体で守り・育てる”。これがわれわれのスローガンです。カテゴリーや立場を超え、関係者みんなが共有できる場が根付いたことは、設立から4年間での最初の大きな成果だと思っています」とうなずく。
埼玉県野球協議会はこれまでに、「埼玉baseballフェスタ」「野球肘検診」などを県内各地で開催してきた。「協議会の目的は主に2つあります。1つは野球をやったことのない子どもたちに、野球の魅力を知っていただいて、野球のすそ野を広げること。もう1つは野球をやっている子どもたちを守り、さらにいい環境をつくって長く続けてもらうこと。どちらかというと、baseballフェスタは前者、肘検診は後者のためといえると思います」と奥村代表理事。
「baseballフェスタ」は未就学時と小学生が対象で、野球教室、ストラックアウト、ホームランチャレンジなどを体験できるイベント。一方、2026年1月に所沢市で行われた「肘検診」には、約200人の小・中学生が参加し、さらに医師、理学療法士、検査技師など医療従事者70人以上がボランティアで参画。2人(2.2%)の子どもが、幼少期に起こりやすい「離断性骨軟骨炎」と診断されたという。

肘検診では参加者に、故障の予防やストレッチについてのアドバイスも送られたそうで、「故障を早く発見して、治療し、しばらく休めば、長く野球ができることに子どもたちが気付いてくれたことは、大きな成果だったと思います」と奥村代表理事。埼玉野球協議会には、医療従事者も「医科学委員会」の委員として名を連ねている。
「医療従事者の方々がボランティアで肘検診に参画してくださったことには、本当に頭が下がりました。子どもたちに少しでも楽しく野球を続けてほしい、怪我をしているなら一刻も早く治して健全な体になって野球を続けてほしいという“熱い思い”が、そこにあると感じました」。そうした“思い”のパワーが埼玉県野球協議会の多様なメンバーを束ね、活動を後押ししている。
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