ブルペンと試合で“別人”になる投手の要因は? 元プロ指摘…練習強度の「ミスマッチ」

公開日:2024.09.06

更新日:2024.09.10

文:川浪康太郎 / Kotaro Kawanami

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プロ多数輩出、仙台大・坪井俊樹氏…“ブルペンエース”は「アプローチを間違えている」

 近年、強力投手陣を形成し、全国大会出場回数を増やしている大学硬式野球部がある。仙台六大学連盟に所属する仙台大。その投手陣を指導しているのが、元ロッテの坪井俊樹氏だ。現役引退後、筑波大大学院を経て2015年にコーチ就任。以降、熊原健人(元楽天など)、馬場皐輔(巨人)、大関友久(ソフトバンク)、宇田川優希(オリックス)らをNPBに輩出している。そんな名コーチが10年間変わらず重視しているのが、投手の練習における「強度」の見極めだ。

 投手にはさまざまな練習メニューがあるが、坪井コーチは体に負担のかかる実戦やシート打撃を「高強度」、その対極に位置するシャドーピッチングやキャッチボールを「低強度」と定義している。また双方の間にはブルペン投球などの「中強度」の練習がある。

「練習だといいけれど試合では結果が出ない、という選手はよくいます。そういう選手のほとんどは練習のアプローチを間違えている。例えば、ブルペン投球を中心に行って、そのまま試合に向かっていくパターン。試合のミスは、試合に近い強度の、シート打撃などの打者を想定した練習に時間をかけないと防げない。試合に向けた段階の踏み方を大切にしよう、という提言をしています」

 ブルペンでは思い通りに投げられるにもかかわらず、試合になるとストライクが入らなくなる、「ブルペンエース」と呼ばれる投手は少なくない。球速や制球力、変化球といった「打者を抑える手段」は「中強度」の練習で磨くことができるが、フィールディングなどを含めた「無失点に抑える手段」は、対打者を意識した「高強度」の練習に取り組まなければ得られないとの考えだ。

年代問わず欠かしてはいけない「アップ中や自宅でもできる」低強度練習

仙台大・坪井俊樹コーチ【写真:川浪康太郎】

 同じ投球動作を繰り返す“再現性”がまだ低く、試合で投げられるレベルに至っていない投手は、体への負荷が少ない「低強度」の練習で基礎を固める。その後ブルペン、シート打撃と段階を踏んで強度を高め、徐々に再現性を高めていく。坪井コーチは「選手それぞれの現在地によって、やるべき内容は異なる。それぞれの課題と練習強度の選択のミスマッチに注意しなければいけない」と力を込める。

 ただし、これらは「あくまでも大学生、もしくは高校生」向けの基本的な考え方。中学生以下の育成年代については、「特に小学生くらいの体の発達段階では、実戦形式でばかり投げると壊れてしまうので、シャドーピッチングやキャッチボールで修正してそのまま試合に向かうこともあっていい」と坪井コーチ。ウオームアップ中や自宅にいる時でも行える「低強度」の練習は、年代問わず重要だという。

 さらに育成年代については「いろいろな動作をしながら体の使い方を身に付けていく段階なので、野球以外のスポーツも通して、投げる、蹴る、走る、跳ぶ、を繰り返して、“できる動き”を増やす時期だと思う」とも話す。

 選手1人1人の課題や現在地の見極めと、それに適した練習強度の選択は、選手自身はもちろん、指導者にも求められることの1つと言えるだろう。

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