キャッチボールだけで「1~2年後に大きな差」 元中日エースが“精密機械”になったワケ

更新日:2025.06.12

文:間淳 / Jun Aida

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元中日のエース吉見一起氏 抜群の制球力武器に2度の最多勝

 現役時代に2度の最多勝に輝き、制球力の高さから「精密機械」とも呼ばれた元中日の吉見一起さんは意外にも、コントロールの重要性に気付いたのはプロに入ってからだった。少年野球の子どもたちも日々の練習でコントロールを向上させることは可能で、特にキャッチボールが大切だという。

 吉見さんは2020年まで中日で15年間プレー。2度の最多勝をはじめ、最優秀防御率やベストナインなど数々の栄誉を手にしている。最大の特徴は制球力。最多勝のタイトルを獲得した2011年は190回2/3を投げて四球を23個しか許していない。8回1/3で1つしか四球を与えない驚異的な数字を残している。

 ただ、吉見さんはプロ2年目まで球速を追い求め、コントロールを重要視していなかった。考え方を変えるきっかけは、当時チームメートだった捕手の谷繁元信さんと森繁和投手コーチの言葉だった。

「谷繁さんと森コーチにコントロールの重要性を説かれました。最初はコントロールよりスピードだろうと思っていましたが、1軍のマウンドに立って、自分の球速では超一流の打者を抑えられないと痛感しました。四球が、いかに無駄かも感じました」

青木やラミレスら超一流の打者を封じるためモデルチェンジ

 球速のある投手は注目され、評価されやすい傾向にある。吉見さんもスピードを上げる方法を模索したが、直球は150キロに届かなかった。プロ1年目から1軍で登板する力はあっても、ヤクルトの青木宣親外野手、巨人のラミレスさんや小笠原道大さんといった各球団の主軸を抑えるのは難しかった。どうすれば強打者を抑え込めるのか。先発ローテーションに入ったプロ3年目から4年目にかけて、コントロールの必要性を強く意識するようになった。

「大事な場面で狙ったところに投げられるようにならないと、超一流の打者を打ち取れないと気付きました。150キロを投げる投手はうらやましかったですし、自分自身もどこかで球速を求めていた部分はありましたが、コントロールを大切にする投球にモデルチェンジしました」

 制球力を上げるために吉見さんが重点を置いたのがキャッチボール。現役を引退してから少年野球の子どもたちにコントロールを良くする方法を聞かれる時も、迷わずキャッチボールと答えている。

「キャッチボールをウオーミングアップと捉えるか、一球一球考えながら投げるかで、1年後、2年後に大きな差が生まれると思います」

キャッチボールで意識するのは右打者の外角「一球一球評価」

 重視するのは、右打者の外角に投げる意識。右投手が右打者の外角に投球する際は、ごまかしが利かないという。吉見さんは「右打者の内角は球が抜けてもボール球になります。でも、外角はシュート回転して甘く入ってしまいます。外角に投げる時は右手だけではなく、足も体も全てを使わないと力強い球になりません」と話す。

 試合の勝負どころで狙い通りの一球を投じるには、練習で時々上手くいく頻度では足りない。高い確率でコントロールする必要があり、そのための練習がキャッチボールなのだ。吉見さんはブルペンに入らなくても、キャッチボールでフォームをつくったり、課題を修正したりできると考えている。

「常にイメージを持って投げることが大事です。一球一球評価します。テーマを持って、何が良かったのか、なぜ上手くいかなかったのかを考えながらキャッチボールをすると、制球力はアップすると思います」

 吉見さんはコントロールが良くなれば、特に小、中学生は試合に出場する機会も増えると指摘する。「ストライクが入らなければ、指導者からもチームメートからも信頼してもらえません。ストライクを取れると試合をつくれますし、守備にもリズムが生まれます」。投手に必要なのは球速だけではない。モデルチェンジしてプロで成功した吉見さんの言葉は、少年野球の子どもたちにもヒントになる。

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