
データ分析で見えてきた課題は…埼玉県野球協議会・奥村剛代表理事に聞く
プロ・アマ、硬式・軟式、女子も含めた埼玉県の団体、関係者が一致団結し、画期的な野球振興活動が進んでいる。プロ野球の埼玉西武ライオンズ、県内に拠点を置く各大学野球部、県高野連、中学軟式野球部を管轄する埼玉県中体連(中学校体育連盟)軟式野球専門部、小・中学生硬式野球各団体、全日本女子野球連盟埼玉県支部などにより、2022年に設立された「埼玉県野球協議会」だ。
4年にわたって続けてきた活動や議論の中で、野球を取り巻く課題、県内各地域の事情が浮き彫りになってきている。同協議会の代表理事を務める株式会社西武ライオンズ・奥村剛代表取締役社長に話を聞いた。
少子化などに伴う野球人口減少は、全国的に深刻な問題となっている。奥村代表理事は「日本中体連に加盟する全国の中学軟式野球部員は、直近10年で約45%も減少。埼玉も例外ではなく、同じ10年間に約30%減少し、さらに長期で見ると、2001年の1万6700人から2024年の6900人に約59%も減少しています」とデータを明かす。
「今は多様化し、いろいろなスポーツを楽しめる時代です。それ自体はいいことだと思いますが、子どもたちには塾や習い事もあり、野球に目を向けてもらうことが難しくなっていると危惧しています。野球という競技は未来永劫、スポーツ界のトップを走っていってほしい、と考えていますので……」
埼玉の野球人口には“地域格差”もある。「広大な土地、野球をやれる環境がある(県西部の)秩父地域では、全小学生のうち野球をやっていただいている子ども(参加率)が5%を超えています。ところが、都市部では2%前後。特に川越市、所沢市、ふじみ野市など人口規模の大きい都市では、1%未満です」と奥村代表理事。
「地域ごとに打つ手を考えていかないといけない、ということです。データを大事にして、常に数字を見ておかないと、打つ手を間違えてしまう」と強調する。協議会が設立されたことで、「各団体にお声がけして数字を出していただいたお陰で、データが収集され分析もできるようになりました。数字から課題も見えてきました。まだ道半ばではありますが、どこを強化していけばいいのか、協議会内で具体的な議論ができるようになってきました」と手応えを感じている。
プロもアマも“フラット”な関係「野球の楽しさを知っていただくことが大事」

都市部で野球人口が少ない一因は、野球に興じられる空き地がなく、公園でキャッチボールをしたり、バットを振ったりすることもできない環境にあることは間違いない。「それに加えて、野球はルールが難しい。バットに当てたり、転がっているボールを捕るのも難しい。小さい子どもたちが取り組むには、他の競技に比べてハードルが高くなっているのではないかと思います」と奥村代表理事は分析する。
都市部に野球ができる広いスペースを生み出すことは、簡単にはいかないが、埼玉県野球協議会では、県内各地で未就学児から小学生向けに「埼玉baseballフェスタ」を開催。野球体験教室、ストラックアウト、ホームランチャレンジなどを通して「バットを振る楽しさ、ボールを遠くへ飛ばす楽しさ、グラウンドを駆け回る楽しさ、ボールを投げる楽しさなどを体験していただきたいと思っています」という。
協議会の事務局業務は西武ライオンズが行っているが、奥村代表理事は「あくまでフラットに、西武ライオンズも同じ野球団体の1つとしてやっています。それが、いろいろな意見を出し合い、みんなで同じ方向を向くための原点だと思います」と強調する。
「プロとして、ネットワーク、情報、データ、人材はアマチュアの方々より多く持っていますので、そういったものはいかんなく発揮します。とはいえ、アマチュアの方々は全員がプロを目指しているわけではない。プロもアマも関係なく、男女の区別もなく、野球を楽しみ、野球の魅力をいろいろな方々に知っていただくことが大事だと思います」と説明。奥村代表理事自身、名刺を「株式会社西武ライオンズ代表取締役社長」と「埼玉県野球協議会 代表理事」の2種類常備し、業務も切り分けて考えている。

そんな奥村代表理事は58歳で、熊本工高、明大、社会人野球のプリンスホテルで内野手としてプレー。プリンスホテルでは、後にヤクルト入りしてNPB通算2133安打をマークすることになる宮本慎也氏と二遊間を組んだが、自身はプロには進まなかった。
現役引退後は野球を離れ、ホテルマンとして埼玉県内にある川越プリンスホテル総支配人などを務めた。2022年に西武ライオンズの社長に就任したが、こうした経歴が、プロとアマを同じ目線で見られるバランス感覚につながっているのかもしれない。
「プロとアマチュアは、お互いに補完し合う関係であるべきだと思っています」と奥村代表理事。「全国規模となるとなかなか難しいですが、埼玉県に限定すれば、やれることはたくさんある。野球関係者が一致団結して、子どもたちが野球を続けられる環境を提供し、守り、育てていきたいと思います」と力を込めた。埼玉県野球協議会の構成団体は、フラットな関係を保ちつつ、団結して県内の野球環境を盛り上げていく。
読んで理解したら、次は動画で習得する
少年野球指導に役立つ練習法や考え方を、実際の動きでも確認したい方は、First Pitchが連動している野球育成動画サービス「TURNING POINT」(ターニングポイント)をご活用ください。
通常は有料会員向けの指導ドリル第1話を、無料会員向けにも公開中です。さらに無料登録だけで、250本以上の指導・育成動画が見放題。メールアドレス・Google・LINEで30秒ほどで登録できます。
小・中学生の育成年代を熟知する指導者や元プロ野球選手など専門家70人以上が、打撃・守備・投球・走塁・体づくりまで、上達につながる練習法を動画で解説しています。
■TURNING POINTの特徴を詳しく見る




