最悪の結末は「野球をやめること」 元巨人内野手が提言、子どもたちを怪我から守るには
「Cambioミーティング」で少年野球の怪我について議論
野球肘や肩痛、腰椎分離症――。野球で頻繁に起こる怪我だ。小学生や中学生の成長期に負った怪我を放置するとさらに悪化し、取り返しのつかないことになる場合もある。もちろん、ストレッチや過度な投球を制限するなどの対策もあるが、子どもの気持ちを理解することも必要になってくる。
5月26日に都内で行われた「Cambioミーティング」。プロスペクト株式会社と、NPO法人BBフューチャーが発起人となり、元プロ野球選手や少年野球関係者、整形外科医らが一堂に会し、野球人口が減少する中、日本の野球界を変革しようと話し合った。その中で、過度な練習による怪我も問題視された。
「肘を小学生で痛めた人は、痛めていない人と比較して再発する確率は約5倍高い」。そう話すのは、慶友整形外科病院スポーツ医学センター長の古島弘三医師。“肘の権威”として知られる古島医師は、再発する確率の高さから少年期の予防が大事だと提言。理事を務めるポニーリーグでは、真っ先に球数制限や肩肘検診を導入、実施するなど子どもたちの未来につながるルール作りを進めた。
球数制限を設けたり肩肘の検診を実施したりすることで怪我のリスクは軽減されるだろう。だが、子どもたちの怪我予防はそれだけではない。痛みを我慢させないことが大切だと、元巨人内野手でNPO法人日本少年野球研究所の代表を務める佐藤洋氏は訴える。
元巨人の佐藤洋氏「最大の迷惑は『君が野球をやめること』と伝えている」
「痛いと言える環境を作ることが大事だと思います」
子どもたちはもちろん試合に出たい。レギュラーを剥奪される不安や、チームに迷惑をかけたくないという思いから、怪我をしていても我慢してしまう選手も多い。その結果、強い痛みが出た時には、既に悪化していることもある。では、どのようにしたら子どもが「痛い」と正直に打ち明けてくれるのだろうか。
自らも同法人で野球スクールを運営する佐藤氏は「コミュニケーションや話しやすい雰囲気を作ることが大事です。隠すことは良くない」と訴える。
「子どもたちには、『最大の迷惑は君が野球をやめること』だと伝えています。高校野球の最後の試合なら痛くても投げるかもしれませんが、(少年野球では)痛みを伴っても投げなくてはいけないような大事な試合はありません」
子どもが勝ちたい気持ちを持つのは当たり前。だからこそ、将来のためにも大人が怪我から守ってあげる環境作りが大事になってくる。