股関節が硬い子は「試合に出しません」 中学生活にも直結…軟式強豪の“不変ルール”

文:高橋幸司 / Koji Takahashi

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中学軟式野球の強豪・東海大菅生中等部は全員で開脚ストレッチ

 成長期の年代だからこそ、心身ともに“柔軟性”が大切になる。東京・あきるの市にある東海大菅生高校・中等部の軟式野球クラブを率いる村上晋監督は、中学生を指導して24年目となるベテランだが、顧問就任時から貫いてきた方針があるという。「股関節が硬い選手は試合に出しません」。自らの意志で体を柔らかくできるか。そこには、学校生活にもつながる“リトマス試験紙”のような意味合いもあるそうだ。

 村上監督は東海大菅生高の野球部部長として春夏3度の甲子園出場を経験し、2002年から中等部の顧問に。2023年には全国中学校軟式野球大会(全中)に初出場しベスト16に進出した。3月31日のロッテ戦(エスコンフィールド)でノーヒットノーランを達成した日本ハム左腕・細野晴希投手らを育てている。

 現在の部員数は3年生12人、2年生10人。さらに10人ほどの新入生を迎え入れる予定だ。クラブの門を叩いてくる子たちに、村上監督が必ず第一に伝える課題がある。「開脚ストレッチができるようになる」ことだ。

「大谷(翔平)選手も佐々木朗希選手も、村上(宗隆)選手も、一流選手はみんなできる。なぜかわかるか? 怪我を防ぐのはもちろん、野球は股関節を使うスポーツだから。今は無理でも3か月、6か月後にはできるようになるんだぞと、そのように声をかけるんです」

 投げるにしても打つにしても、股関節の柔軟性はスムーズな重心移動に欠かせない。特に投手と内野手には必須の能力だと村上監督は語る。しかし、長年中学生を見てきて感じるのは、体が硬いためにキャッチボールをしてもステップが取れず、上半身と下半身が噛み合わない選手が多くなってきていること。ちょっとしたことで怪我をしてしまう子も年々増えているという。

 公園遊びの制限、コロナ禍の自粛生活など要因は様々にありそうだが、元を辿れば赤ちゃんの頃からの生活習慣の変化もあるのではないかというのが村上監督の見立てだ。「昔は(広い家の)縁側でたくさんハイハイをさせていたけれど、今の子は(狭い)マンション暮らしが多く、ハイハイをする機会や場所がなく、すぐにつかまり立ちしてしまう。股関節を使う機会がないまま育っているのではないでしょうか」と分析する。

ノーヒッター・細野も体が柔らかくなり「成績もオール5でした」

コツコツと柔かくできるかは「普段の学校生活にも繋がる」と村上監督【写真:高橋幸司】

 特に1日何回といった柔軟メニューを強制させるわけではない。「言われて必要だと感じた子、試合に出たい子は自分で考え、毎日コツコツできます」。そうした素直さや、努力ができる性格は普段の学校生活にも表れるといい、受験前の一夜漬けではなく、地道に勉強をしてテストでも結果を残せる。「細野がまさにそうでした。初めは硬かった体が柔らかくなり、成績もオール5でしたから」。

 では現在の選手たちはどうか。3年生を集めて見せてもらうと、全員が見事な開脚を披露。2年生も大半が両足を広げて床につけることができていた。勉強も含め、コツコツ取り組める子が多いという証左だろう。

 ひときわ綺麗な開脚を見せていた大澤晴選手(3年)は、「菅生中では体が柔らかくないと試合に出られない」と聞いて学童の頃から柔軟体操に取り組んでいたといい、「自分は一塁手ですが、体を伸ばしてボールを捕れる範囲が広がりましたし、小学生の頃はたまにあった怪我も、中学に入ってからはほとんどなくなりました」と効果を語ってくれた。

「中学生は野球が上手いから偉いわけではなく、人として成長しているかが大事。体が柔らかくなるのも1つの成功体験になる」と村上監督。文武を両立できる選手ならば、指導者はなおさら安心して試合で起用できる。股関節の柔軟性は、そうした試金石になるわけだ。

【実際の写真】胸までピッタリつく部員も… 綺麗な「開脚ストレッチ」を披露する東海大菅生中等部の選手たち

胸まで綺麗につく大澤晴選手【写真:高橋幸司】
開脚ストレッチをする3年生たち【写真:高橋幸司】

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