「野球人は威圧的で怒鳴りすぎ」 未経験者の声が転機…強豪学童が見直した“叱る基準”

更新日:2026.05.15

文:間淳 / Jun Aida

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山梨県の学童野球チーム「ラウンダース」を率いる日原宏幸監督

 野球界の常識は時に、社会の非常識に映る。創設15年目で全国大会に2度出場している山梨県の学童野球チーム「ラウンダース」では、選手がミスしても指導者から怒声は飛ばない。長年野球中心の生活を送ってきた日原宏幸監督は、野球未経験の友人からの言葉で、それまでの当たり前を見直した。

 ラウンダースには、日課としている練習がある。それは、塁間のボール回し。本塁、一塁、二塁、三塁と4か所のベースに選手が散らばり、本塁から時計回りでボールをつなぐ。目標タイムは20周で2分15秒。送球が後ろに逸れた時は、全員でベースランニングを1周してからやり直す。

 タイムが設定されているため、選手たちは握り替えや送球にスピードを求められる。わずか数周でミスが続くことも珍しくない。ボール回しは、目標タイムを切るまで続く。平日夜の2時間の練習時間が、このメニューだけでほとんど終わってしまう時もあるという。

 この練習を見た野球経験者は、おそらく大半の人が驚く。なぜなら、ミスが出ても指導者が全く怒らないからだ。怒声や罵声は一切ない。ミスが続いても、指導者が選手を集めることもない。代わりに、キャプテンが仲間に集合をかけ、エラーの要因や修正方法を話し合う。仲間の失敗を責める選手もいない。

 選手のミスに対して、怒りの感情は湧かないのか。日原監督にたずねると、笑顔で答えが返ってきた。

「怒りは湧きません。ミスは出るもので、上手くいかないという考えがベースにあります。そして、選手が上手くできないのは、上手く教えていないからです。私の責任だと思っています」

野球の目的を変える監督の“威圧感”「選手が伸びない」

ラウンダースの日原宏幸監督【写真:間淳】

 日原監督は現在、55歳。現役の頃はNEC山梨の軟式野球部でプレーし、エースとして国体で優勝した経験もある。怒鳴られながら練習することが当たり前だった時代を過ごしてきた。それが常識だと疑わなかった。しかし、チームを立ち上げて8年ほどが経った頃、友人の言葉が胸に刺さった。こう振り返る。

「私の仲間の中には、野球経験のない人もいます。その中の1人から、野球人は威圧的で、怒鳴りすぎだと指摘されました。そんな指導者のもとでは選手は力を発揮できない。だから、試合で負けるんだよと言われました」

 日原監督には、友人の指摘に納得する部分があった。2018年に初めて全国大会に出場した際、「監督に威圧感があると、選手は伸びないのではないか」と感じたという。

「監督が選手を威圧したり、怒鳴ったりすると、選手の目的が変わってしまいます。本来は野球が上手くなりたくて練習しているのに、選手は監督に怒られないように動くようになります。自分の指導方針に疑問を抱いたタイミングと友人の言葉が重なって、選手との接し方を見直しました。野球経験の有無にかかわらず、他の人の視点や意見にはヒントがあるので、今も耳を傾ける意識を持っています」

 日原監督はミスが出る前提でチームを指揮しているため、選手の失敗で平静を失うことはない。だが、選手を叱る基準を2つ設けている。1つは、チャレンジしなかった時。例えば、練習試合では積極的な走塁を掲げているにもかかわらず、次の塁を狙う姿勢が見られない選手には厳しく指摘する。

「野球のプレーの中で、走塁は特に感覚が大切です。盗塁を決めるために必要なリード、野手の間に飛んだ打球や内野ゴロでスタートを切る判断など、実際に走って経験しないと分からない部分があります。出塁した時は牽制でアウトになっても構わないので、選手にはリードの仕方を色々と試して距離感をつかむように伝えています。せっかくの機会に、何もチャレンジをしないのはもったいないですから」

苦しい時に表れる人間性…小学生でも妥協しない指導

グラウンドには選手たちの目標が掲げられていた【写真:間淳】

 もう1つの基準は、上手くいかない時の振る舞い。疲れが出た時や、チームにミスが出た時など、苦しい状況になるほど人間性は表れる。日原監督は凡退した後にふてくされたり、失敗を人のせいにする言動が見えた選手には態度を改めさせる。その点は、小学生であっても妥協しない。

「チームは勝利を目指していますが、全国大会に行くことが偉いわけではありません。敗戦も将来の財産になります。選手たちには野球を通じて挨拶や整理整頓、仲間を思いやる気持ちなどを学んでほしいと思っています」

 野球は勝負である以上、勝利を追い求めるのは子どもたちのモチベーションや成長につながる。しかし、指導者や保護者といった大人が勝利にこだわりすぎると、大切なことを見失う可能性がある。そして、野球界の常識に縛られた考え方は、子どもの成長を妨げる恐れもある。

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