30失点大敗、練習は馴れ合い→結成1年で全国初勝利 近所の中学生が“大変貌”できたワケ

「全日本少年軟式野球大会」に初出場した北海道・おんおーるベースボールクラブ
“近所の中学生”を全国大会に導いたのは、信じ続けた「哲学」だった。中学軟式野球の日本一を決める「第43回全日本少年軟式野球大会ENEOSトーナメント」が8月10〜14日に横浜スタジアムで行われ、北海道地区代表としておんおーるベースボールクラブ(以下、おんおーるBBC)が初出場した。同クラブは2025年4月の結成ながら、今年3月に行われた春の全国大会にも出場。1年余りでの春夏全国出場を成し得たが、何がチームを大きく成長させたのか。
おんおーるBBCは、十勝平野のほぼ中央、音更町(おとふけちょう)の総合型地域スポーツクラブを母体とするクラブチームだ。2025年4月に、部活動の地域展開の受け皿として、連合チームで活動していた音更中と駒場中の野球部がベースになり結成された。十勝エリアは、冬場はとにかく冷え込む。「最低気温はマイナス20度以下になることもあります。耳が取れそうなくらい寒いです」と嶋崎暁人監督は話す。
嶋崎監督は隣接する帯広市の出身だ。社会人軟式の強豪・六花亭でプレーし、現在も社業にあたっている。関係者から声をかけられ、おんおーるBBC創設時に監督に就任したが、母校の高校のコーチ経験はあるものの、監督は未経験。音更中と駒場中も特段、強豪ではなく「今の3年生が1年生だった頃は、地区予選初戦で0-30でコールド負けするようなチームだったと聞いています」と嶋崎監督は言う。
しかし、その1年後には春の全国大会出場を果たしている。チームが大きく変わった背景には、徹底的な私生活の見直しがあった。元々小学校が同じメンバーも多く、中学校では連合チームで活動。自転車で十数分で集まれる“近所の子”たちで、よく言えば仲良く和気あいあいとしているが、悪く言えば“馴れ合い”だった。ベンチ内は散らかり、グラウンドにはボールが転がったままのような、弛緩した雰囲気で活動していたという。
嶋崎監督は明かす。「心で野球をすることを知らないなと思ったんです。元々ある程度、技術のある子たちではあったんですが、そこを教えないと勝ち続けることは難しいだろうなと」。また、単調で手を抜いてしまいそうな基礎的なトレーニングメニューも、「体力がないと試合終盤に集中力が落ちてしまう。だからこの練習をするんだ」と重要性を理解させながら取り組ませた。
生活態度一変→全国大会に春夏連続出場…信じ続けた“哲学”

監督自身、野球はほとんど教えていないと言うほど、礼儀や態度、練習の意図、取り組む姿勢について徹底的に指導を続けた。すると元々の仲の良さを団結力に変え、みるみるうちに実力を伸ばし、道内大会を勝ち抜いて、2025年秋には、今春の全国大会出場を決めた。嶋崎監督は「ビギナーズラック」と笑うが、夏の全国大会も連続で出場し、揺るぎない実力になっていることは間違いない。
春の全国大会では初戦敗退を喫したが、今夏は大阪ブロッサム(大阪)に5-2で勝利し1回戦を突破。3回に先制し、一度は追いつかれるも、4回に勝ち越すような、鍛え続けた集中力の高さが発揮された全国大会初勝利だった。主将の岡部来斗捕手(3年)は、「スローガンの『今を全力で!』を体現するようなチームになれてきていると思います」と、自分たちの“変貌ぶり”に胸を張っていた。

準決勝では、南星中(沖縄)に先制されるも1点ずつ詰め寄り、一時同点に。7回に失策が絡み失点し2-3で敗れたが、準優勝チームにあと一歩まで迫った。主将・岡部は「最後まで諦めずみんなで楽しんで戦うことができました」。涙と一緒に笑顔も見せていたのは、変わろうともがくチームを引っ張ってきた努力が報われたと実感したからだろう。
「この大会中も、球場に向かう途中でゴミを自分から拾う姿がありました。1年前とは意識が大きく変わりました。中学生は普段の生活が野球の実力につながると思ってやってきたので、続けてきてよかったですね」と振り返る嶋崎監督。選手たちを信じて向き合い続け、共に掴んだ見事な初勝利だった。
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