衝撃の「初回先頭から3者連続HR」 初出場で全国4強…超攻撃打線を生んだ“特殊事情”

文:高橋幸司 / Koji Takahashi

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マクドナルド・トーナメントで3位に輝いた神奈川・南瀬谷ライオンズ

 創部49年目で初出場の大舞台で、ベスト4進出の栄誉を掴んだ。8月8日〜13日に愛媛県で開催された“小学生の甲子園”「高円宮賜杯 第46回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」に出場した神奈川・横浜市の南瀬谷ライオンズ。チームを率いて5年目の渡邉記章監督は躍進の要因を「無欲」と表現したが、そこには全国出場という目標を明確にしつつ、伸び伸びと子どもたちを育てる指導方針があった。

 チームがピンチに立たされた場面。マウンドに行って声掛けをする学童監督たちの振る舞いは様々だが、渡邉監督はしゃがんで子どもたちよりも目線を低くし、アドバイスを送る姿が印象的だ。「選手たちが僕の“ラジコン”になってしまうのだけは嫌なんです」。きちんと対話をして理解を促し、気持ちよくプレーしてもらう。そんな両者の関係性は、活気に溢れるダッグアウトの様子にもうかがえた。

 横浜市の最西端、瀬谷区を拠点に活動。今夏の全日本学童では、3回戦で2023、2024年連覇の新家スターズ(大阪)に7-6と打ち勝ち、準決勝では敗れたものの多賀少年野球クラブ(滋賀)と1-2の接戦。県勢過去最高の3位に輝く快進撃を演じた。

 1977年創部の歴史をもつ地元では名の知れた強豪だが、初出場までに時間を要したのには、640チームがしのぎを削る激戦区・神奈川であることはもちろん、横浜ならではの“特殊事情”もあったという。

「横浜には『YBBL』という市の小学生連盟が主催する大きな大会があります。もちろん、全国を目指してはいるんですが、『YBBL』を勝つことも大変な名誉で、天秤にかけてしまうところもあったんです」。横浜商工高(現・横浜創学館高)出身で、パパコーチから指導に携わって10年になる渡邉監督は、監督就任を期に「外の景色を見たい」と方針転換。全国を見据えて、投打に戦力を整えてきた。

 投手陣は「1週間210球」の球数制限にも対応できるようエース・音村星茶(せいた)投手(6年)を中心に左右5人を育成。打っては長打力を備えたバッターを1〜5番に並べ、公式戦毎回得点を目指した。「野球は7割が失敗のスポーツ。その失敗を踏まえて、次の打席で挽回してくれればいい」。県予選も伸び伸び野球で、戸塚アイアンボンドス、清水ヶ丘ジャイアンツら地元のツワモノたちを破り、目標に辿り着いた。

3連発に終盤の集中打…マナーも素晴らしく新設アワードも受賞

準決勝で力投する南瀬谷のエース・音村【写真:高橋幸司】

 そんな超攻撃型打線が威力を発揮したのが、新家スターズ戦だ。「思い切り振ってこい」と渡邉監督が送り出した初回、先頭の古川泰輔内野手(6年)が初球を振り抜いて先制ソロを放つと、2番・橋元涼内野手(6年)、3番・馬場壮輝(たける)内野手(6年)も右へ左へと豪快に特設フェンス越え。驚きの「初回先頭から3者連続アーチ」で勢いに乗った。

 実はここにも“特殊事情”がある。地元では2029年の全面禁止に先駆け、高反発素材を使った少年用複合バットの使用がすでに制限されているという。普段は金属や木製しか使わず、平日も積極的にスイングしている子どもたちが、制限のない全国大会で複合バットを手にできたのだから鬼に金棒だ。「あのホームラン(3発)もすごかったですが、終盤に相手を突き放せた集中打を褒めてあげたい」。3-3の同点から5回、6回と2点ずつ加えて西の強豪を寄り切り、南瀬谷の名を全国に轟かせた瞬間だった。

 一方で、名将・辻正人監督率いる多賀少年野球クラブ戦は1点差というスコア以上に「野球の質が違った。とんでもないくらい高い壁を感じました」という。1球1球での間の取り方、駆け引き……。与えられた宿題は横浜に持ち帰り、もう一度磨き直す。

準決勝後に多賀・辻監督(右)と健闘を讃えあう南瀬谷・渡邉監督【写真:高橋幸司】

「良い選手が集まれば勝てるというチームだけは嫌。多賀さんのように選手がニコニコ笑顔で質の高いプレーができる、周りから『入りたい』と思ってもらえるチーム作りが理想です。人材を育てながら、野球を覚えていってもらうところに着目して、指導していきたいですね」(渡邉監督)

 南瀬谷ライオンズは今大会から新設された、挨拶や礼儀、仲間への声かけ、審判や相手への敬意など、“人としての成長”に繋がる行動を評価した「マクドナルド グッドマナーアワード」を受賞したことも付け加えておこう。プレーもチームの雰囲気も1ランク上げて、再び大舞台に帰ってくるつもりだ。

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