
ジャイアンツカップで優勝…取手リトルシニアが“平等に”練習する理由
名門たるゆえんは、監督の親心にあるのかもしれない。茨城の中学硬式野球チーム「取手リトルシニア」は、今月17日に行われた「第20回全日本中学野球選手権記念大会ジャイアンツカップ」決勝で、多摩川ボーイズ(ジャイアンツ U15 ジュニアユース、東京)を破り、4年ぶり2度目の日本一に輝いた。取手リトルシニアといえば、120人以上の部員を抱えながらも、全員が全く同じ練習を平等に行うことで知られる。このスタイルを長年続ける理由とは何なのか、石崎学監督に話を聞いた。
3学年合わせて120人以上の部員を誇る大所帯の取手リトルシニア。隣接する千葉県など県外から来る選手もいるため、平日は各々の学校が終わり、グラウンドに着いた順から練習に入っていく。そして、内野手でも外野フライの捕球を、外野手でも内野ノックや挟殺プレーを行うなど、誰もがローテーションで、同じ時間同じメニューをこなすのが特徴だ。
これだけの部員を抱えていると技術レベルに差が生まれやすく、全員が同じ練習を行うのは難しいようにも思える。しかし、この形を長年継続する石崎監督は「中学生は、基礎が身に付くと大きく伸びる場合があるからです」と意図を明かす。
成長期を迎える中学生は、技術と体の成長のバランスが噛み合った時に、プレーが劇的に変わることがある。また、小学生時代に受けてきた指導にも差があるため、基本的な練習を皆等しく一定量行うことで、チーム全員の基礎技術レベルを一定にする目的がある。
もう1つが、高校野球や大学野球でも通用する選手になるためだ。石崎監督は、「今守っているポジションで上手くなってほしいという考えは、僕の中にはないんです。高校に行ったらサードの子が外野をやるかもしれないし、外野の子がファーストをやるかもしれない。高校や大学に行ってどれだけ勝負できる選手になれるかを大事にしています」と語る。
実際に、OBの柳町達(現ソフトバンク)は慶大時代に内野手に挑戦。東京六大学リーグでは三塁を守り、現在は外野手としてプレーする。2025年に関東第一高校で夏の甲子園に出場した坂本慎太郎(現中大)は、中学時代は投手ながら、3年時の東東京大会では背番号「8」をつけ投手と野手の二刀流で活躍。大学では外野手として活躍している。上のステージに進んでいく選手たちの先も見据える、中学野球指導者としての“親心”が伺える。
120人全員に与えるチャンス…技術もモチベーションも高く保つ

大所帯だと、3年生になってもベンチに入れないメンバーが出てくることで、モチベーションの差が生まれる懸念もある。そこで石崎監督は「全員に違ったつらさがある」と伝えるという。
「ベンチ入りメンバーにはメンバーのつらさがあり、メンバーに入ってるけれど試合に出られない子のつらさもあり、レギュラーの中でも結果を求められるつらさもある。それぞれの立場でつらさがあって、どれが楽だとか、どれがつらいとかはないんだよっていう話はしています」

気持ちにもまだ波がある中学生だからこそ、最後まで野球をやり切る目的を見失わせない。そのために、全員に同じ練習機会を設け、平等に上達のチャンスを与える。主将として部員をまとめてきた三ツ井蓮内野手(3年)は「120人全員が大会まで気合いが入っていて、一つになってここまで戦えました」と、日本一までの歩みを振り返った。
選手を褒めないと自称する石崎監督だが、決勝戦後の優勝インタビューでは「選手たちにここまで連れてきてもらいました。ありがとう」と労った。120人の部員は静かに耳を傾け拍手を送っていた。これから先の舞台で、誰が花開くかは分からない。しかし、石崎監督が3年間で授けた技術とメンタリティーが、新たな挑戦に踏み出す選手の背中を押してくれるのは、間違いないことだろう。
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