
「成長至上主義」をスローガンに掲げる東京農大一中軟式野球部
選手が生き生きと発言し、主体的に野球ができるようにするには、どんな指導が有効だろうか。新入生を含め部員31人が所属する東京・世田谷区の私立東京農大一中軟式野球部は、「成長至上主義」のスローガンを掲げ、都大会上位、関東大会出場を目指しつつ、部活動を通して得た経験を“アウトプット”できる選手を育成している。ユニークなのが、小学生チームとの野球教室を積極的に実施していること。顧問を務める吉田亮先生は、「野球という“ツール”を使って様々なことを学んでほしい」と語る。
同部は4月下旬、「侍ジャパン」や中日でアナライザーを務め、現在は株式会社ライブリッツでデータ計測に携わる志田宗大さん(元ヤクルト)を招聘しスイングスピードの測定を行った。印象的だったのが、タブレットの計測結果を覗き込みながら、「この数字はどういう意味ですか?」などと意欲的に疑問を投げかける選手が多かったことだ。
「質問はありますか」と聞いても、モジモジ恥ずかしがって手を挙げられないのは思春期の子たちによくあること。アマチュアチームを多く視察している志田さんも、「『自分はこう考えていますけど、どうですか』と積極的に聞いてくる子が多い。珍しいですね。何より楽しそうに練習をしている」と感銘を受けていた。
普段の練習メニューを決める際にも、チームが抱える課題をもとに、部員同士で意見を交わすという。そうした主体性を育むポイントが、「アウトプットする力」「言語化する力」を鍛えること。そこでうってつけなのが、小学生チームとの野球教室や合同練習だという。
「自分の肌感覚ですが、生徒たちがすごく成長すると実感するのが『文化祭』のときなんです」と吉田先生。同校の文化祭は2日間で約1万人が訪れるといい、小さな子どもたちもたくさんやってくる。
「クラスの出し物がどういうものか、わかりやすく説明しなければいけない。人に話す、教えることってすごく大事なんだなと。同じように、下のカテゴリーの子たちに野球を教える機会を作るのが、成長につながるのではないかと考えました」
畑違いのハンドボールで理解した“肘抜け”の道理

アウトプットする(教える)ためにはインプットする(教わる)ことも大事。そこで同部では、外部コーチを招聘したり、今回のように計測の機会を設けたり、“外からの刺激”を部員たちに提供している。
グラウンドにも、スイングプレーンを覚えるバレルバット、投球を面で捉えるスピンバット、短時間で全身運動ができるバトルロープなどの様々な器具が。さらに、段ボール箱を開いて見せてくれたのは、最近インドから取り寄せたばかりというクリケットバット。打面が広いだけに、中学初心者には「バント練習にも使えます」と吉田先生は語る。
そうした、狭い視野にとらわれない指導ができるのはなぜか。日大生産工学部で大学までプレーし、2019年までは東京農大一高野球部の顧問。転機は2020年、“畑違い”のハンドボール部の担当になったことだという。
「ハンドボールを見て真っ先に感じたのが、『変な投げ方をする子がいない』ということでした。投げる対象物が大きいか、小さいかによって人間の動きは変わる。ボールが小さくて軽い野球は、肘抜け(肘から先に出る投げ方)になりやすいとわかったんです」

そこで、自分がやってきた野球を、もう一度勉強し直そうと実感。時間を見つけては他の高校や中学、大学の練習を視察に行ったり、著名な指導者や野球塾コーチに話を聞きにいったりするようになった。公立の上一色中(東京)を全国強豪に育て上げた故・西尾弘幸監督も、教えを乞いにいった一人。「西尾先生がまさにそうでしたが、指導者ってちゃんと学び続けないとダメなんだなと思っています」。
2024年に野球部顧問へ戻った吉田先生が整えた練習環境は、そうして外から学び取ってきたアイデアに溢れている。「他力本願男なので」と笑うが、決して選手たちに押し付けているわけではない。
「ゼロから1へ、環境を整えられるのは自分。でも、そこから2、3、さらには10へと大きくできるかは選手たち次第です」。野球を通じて学んだことを引き出しに、高校、大学以降で花を咲かせてほしい。中学で学んだ「アウトプット力」は、きっと長い人生に生かされていくはずだ。
◎東京農大一中軟式野球部のインスタグラム
https://www.instagram.com/n1bc.official/
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