「終わるまで絶対に帰宅しない」 管理人の叱りにめげず…元ドラ3投手の感性磨いた“日課”

公開日:2025.07.17

文:片倉尚文 / Naofumi Katakura

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元ヤクルト右腕・山本斉氏が子どもの頃に続けた壁当て…授業中も磨いた感性

 ポニーリーグの頂点を決める「マルハングループインビテーション 大倉カップ 第51回全日本選手権大会」は、18日に開幕する。注目チームの1つが、創部2年目で初出場を果たした「武蔵川越ブレーブス」だ。監督を務める山本斉(ひとし)氏は、投手としてヤクルトで7年間プレー。子どもの頃に熱中した取り組みが後に役立ったと振り返る。

 山本氏は大阪府出身。4つ違いの兄の影響を受け、小学1年で野球を始めた。小学4年でボーイズリーグの「ジュニアホークス」(大阪南海ボーイズ)に入部。主に投手を務めた中学では、全国大会を何度も経験した。進学した酒田南高(山形)の1年夏、背番号「11」で甲子園に出場。後に原因不明の腰痛に見舞われたが克服し、2007年高校生ドラフト3巡目でヤクルトに入団した。

 子どもの頃から野球への意識が高く、放課後に自主練習を行うのが日課。夢中になったのは“壁当て”だった。自宅近くの駐車場の壁に、石で1から9まで番号を振り、順番に全て当てるまで帰らないと決めた。「周りに硬式をやっている子もいないし、キャッチボール相手がいませんでした。2分で終わる日もあれば、2時間かかることもありました。終わるまで絶対に帰宅しませんでした」。

 投げるうちに「こう投げれば、ここに行く」といった感覚が分かるようになってきた。駐車場の管理人に「またやっているのか」と叱られても、「すみません」と謝りながらめげずに続けた。壁当てで磨かれた指先の感性は、後に役立ったという。

 日々の生活も、野球中心。パフォーマンス向上に繋がるならと、様々なことにトライした。学校の階段を「けんけん」で上り下りして級友から変な目で見られたことも。授業では黒板を見つめた状態のままノートを取った。ノートを見なくとも真っすぐ書けるのか。授業に集中して神経を研ぎ澄ませ、自分の思い通りに体を動かせるように鍛えていたという。

 こうした体験は今に生きているようだ。同じ練習をしても意識の持ちよう、考え方次第で成果は変わってくることを選手に説く。「素振りも漫然としていては意味がありません。シンプルな練習も考え方ひとつで変わります。“最強の練習にしなさい”と選手には言っています」。子どもの頃に磨かれた感性は、後に大きな助けになる。

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