「万全な準備をして、100%の力で野球の楽しさを伝える」
深刻な競技人口の減少が叫ばれる中、滋賀・多賀町にある小学生軟式野球チーム「多賀少年野球クラブ」のメンバーは増えている。怒声罵声を禁止し、楽しみながら自然と上手くなる辻正人監督の「勝利理想主義」が共感を得ている形だが、他にも秘密があった。連載11回目のテーマは、どのチームもメンバー獲得のために取り組んでいる「練習体験」。辻監督は「30%の力しか注がないのであれば、やらない方がマシ」と言い切る。
少年野球界が抱える大きな課題の1つに、競技人口の減少がある。少子化に加えて、習い事の選択肢が増えているため、野球をする子どもたちが減るのは避けられない。しかし、多賀少年野球クラブは競技人口減少と無縁と言える。その理由は全国屈指の強さ以外の部分が大きいと、辻監督は考えている。
「全国大会には20年以上前から出ていますが、メンバーが一気に増えたのは、この5年くらいです。このタイミングで最も変わったのは、いわゆるスポ根を完全に廃止したことです。野球を楽しみながら自然と上手くなるように普段から練習していますが、他のチームとの違いは練習体験への意識にもあると思います」