「巨人アカデミー起源」の学童チームが快進撃 発足時は逆風も…保護者に支持されるワケ

参戦認可から4年…「群馬ワールドウイングス」が全国予選で県4強入り
ジュニア世代の野球人口が激減する一方で、個人向けの野球塾や野球スクールが全国的に増えている。NPB12球団も大半が、いまでは小学生向けの通年スクールを開いており、元祖の「ジャイアンツアカデミー」は開校20年の節目。そして同アカデミーの系譜を汲む学童チームが、新たなパイオニアとして注目され始めている。「小学生の甲子園」とも称される、全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントの群馬県予選で、初めてベスト4入りした「群馬ワールドウイングス」(以下、ウイングス)だ。
脚光を浴びている理由は、通年の野球スクールが編成するチームであること。加えて、昨年は春の県大会(選抜少年学童軟式野球大会)で準優勝など、着実に成果を上げてきているからだ。
スクールの一環として、生徒たちで紅白戦や対外試合をするケースは他でもあるかもしれない。だが、全国8000以上のチームが登録する全日本軟式野球連盟に加盟し、公式大会に参戦しているスクールは、おそらくここだけだろう。
ウイングスの母体となっている「群馬ベースボールアカデミー」(以下、アカデミー)は、2021年に高崎市で開校した。コロナ禍で閉校を余儀なくされた、ジャイアンツアカデミーのフランチャイズスクールを引き継いだ部分もあり、講師陣も何人かが残ってリスタート。そして2022年秋には地元の軟式野球連盟に加盟したが、これにも骨を折ったのが読売巨人軍の野球振興部前部長の倉俣徹さん(高崎中央ポニー監督)だ。ジャイアンツアカデミーの指導育成メソッドを考案して校長も務めた倉俣さんをしても、連盟登録は一筋縄ではいかなかったそうだ。
「学童野球チームは、昔は小学校単位で編成するのが一般的で、地方にいくほどそれが色濃く残っています。高崎市も同様ですから、ウイングスへの拒絶反応や抵抗も当初は相当なものでしたよね」(倉俣さん)
5期生にあたる現6年生のキャプテン、唐澤幸雅選手は開校当初からのスクール生で、父・一幸さんは入会理由をこう語る。
「やっぱり、息子にはうまくなってもらいたいし、高みを目指してもらいたいというのがありました。それと、クラブチームを編成する予定ということだったので」
スクール生からチーム入部は任意も…大正解だったという保護者も

アカデミーは月曜から木曜日まで。現在は未就学児から6年生まで5つのコースがあり、1コマ50分〜90分。月謝は3000〜9000円で、定員は各20人。土日は、講師陣と生徒たちで編成するウイングスが活動しているが、全生徒が参加しているわけではない。ウイングスに入るかどうかは任意。当初からアカデミーの講師も務める大嶋良汰監督によると、ウイングスの入部率は5割程度だという。
「判断はあくまでも各ご家庭で。スクール側からウイングスへ勧誘したり、外のチームから選手を引き抜くとかも絶対にないです。そもそも、スクールとウイングスは完全に別もの。スクールは初心者も多いので、他の生徒と力の壁を感じさせないような指導やケアを心掛けています」
6年生で二塁を守っている阿部力毅選手は、4年前に兄とともにスクールに通い始めた。そしてしばらくしてから、兄弟でウイングスに入部。父・大我さんはそれが大正解だったと語る。
「スクールで同じクラスでも、小学校はバラバラで、違うチームでやっている子たちもいます。大会では敵味方で戦うこともあるけど、彼らの仲は崩れないというか、とてもいい友だち関係を築けているなと感じることも。小学生にはそういう経験も貴重かなと思います」

ウイングスの現6年生の代は、多少の出入りもありながら最終的に10人で落ち着いた。そして昨年秋の始動時から「全国出場」を大目標としてきた。秋の新人戦は県大会の1回戦で敗退。春休み中の県選抜大会は、市の予選で敗れて出場できなかった。
「正直、高崎市で勝つことのほうが難しい面もあります。風当たりも強かったり……。でも、高崎市の代表として県大会で活躍すれば認めてもらえると信じていますし、いまのメンバーはいろんな負けを経験しながら、それを糧にやってきました」
こう語る大嶋監督は、桐生第一高出身の元投手で24歳。ナインを引っ張るリーダーのような立ち位置で、高圧的な言動は一切ない。守る選手たちの動きからは「捕る」「投げる」の基本がうかがえて、打ち方はそれぞれでも一様にバットがよく振れている。
一般的な学童チームより割高も「おカネの問題ではない」

保護者の組織や当番制はないが、練習や移動・運搬などは、有志の父親たちがサポート。そして全国予選の県大会では、下級生を含む大応援団がスタンドから声を枯らすなかで、サヨナラ勝ちもあり、本塁打や送りバント、盗塁もあり。外野から内野経由で本塁へとボールをつなぎ、相手のランニングホームランを阻むシーンもあった。
迎えた県準決勝で7-9と敗れたものの、4回までスコアボードに「0」がなし、という壮絶な打ち合いで球場を沸かせた。翌日の3位決定戦も落としたが、「悔いない!」「やり遂げた!」との声が内外から。
「ちょっと前までは、大差をつけられてそのまま負けてきたんですけど、ミスしても凹まないし、一人ひとりがワンプレーにこだわって全力でやれたと思います」(大嶋監督)
「全国を狙っていたので残念は残念ですけど、県でベスト4というのはウイングスにとっても大きなことかな」(唐澤主将の父・一幸さん)
また、県で4位となったことで、8月に神奈川県で開催される上部大会「コントリビュートカップ第49回関東学童軟式野球大会」に群馬県代表として出場することに。ついに県境も越えることとなったチームは、その後の対外試合で連勝中だという。

ウイングスの活動費は、各家庭で月3500円。これにスクール代も乗ってくる分、一般的な学童チームよりは割高だ。でも、前出の阿部選手の父・大我さんは「おカネの問題ではない」と熱く語る。
「練習から親も一緒になってやれるなんて、学童だけじゃないですか。かかる費用とか時間とか、ぜんぜん苦に思いませんし、いましかできないことを全力でさせてもらっている。おカネじゃ買えない経験。そういう感覚はたぶん、どの親も一緒だと思います」
さて、後に続く野球スクールや野球塾がこれから現れるのか。少子化と野球離れが加速し、学区制が崩壊している地域も少なくないだけに、可能性は十分にあるだろう。
○大久保克哉(おおくぼ・かつや)1971年生まれ、千葉県出身。東洋大卒業後に地方紙記者やフリーライターを経て、ベースボール・マガジン社の「週刊ベースボール」でロッテと大学野球を担当。小・中の軟式野球専門誌「ヒットエンドラン」、「ランニング・マガジン」で編集長。現在は野球用具メーカー、フィールドフォース社の「学童野球メディア」にて編集・執筆中。JSPO公認コーチ3。
https://www.fieldforce-ec.jp/pages/know
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