多賀少年野球クラブは月、水、金を「野球以外に使う時間」に設定
2018、19年に2年連続日本一を果たすなど、全国大会常連の小学生軟式野球チーム「多賀少年野球クラブ」は休日を“推奨”している。月、水、金を野球以外にあてる時間にし、「ディズニーランドに行きます」と土日の練習を休む選手もいるという。チームを指揮する辻正人監督の連載第10回のテーマは「休みの大切さ」。体を休める以外にも、重要な意味があるという。
多賀少年野球クラブの全体練習は土日祝日に行われ、小学1年生までと初心者は午前中の2~3時間、2、3年は午後3時、4年生以上は午後5時が基本となっている。火曜と木曜は自由参加の練習だ。辻監督は月、水、金曜を「野球以外のことに使う時間」としている。
「野球はいいトレーニング、いい食事、いい休養によってパフォーマンスを高められます。子どもたちには、週3日は野球以外の時間と伝えています。野球が遊びになっている子はいるかもしれませんが、グラウンドで練習することはありません。家で自主練習をする子も少ないと思います」
土日祝日の練習も原則は「自由参加」。他に用事があれば、選手も指導者も遠慮せず休む。辻監督が求めるのは、練習に参加できない理由を明確に伝えること。実は、重要な理由が隠されている。
「野球より大切な時間は、たくさんあります。家族でディズニーランドに行く、阪神戦のデーゲームを観戦するなどの予定があれば、『いいなー、気を付けて行ってこい!』と伝えます。大切なのは、家の用事というように濁さないことです。子どもたちが何でも気軽に口に出す雰囲気を作らないと、体が痛い時や違和感がある時、指導者や保護者に言いづらくなってしまいます」
理由を濁さず「何でも話せる雰囲気作り」が怪我防止にも効果
少年野球では痛みや違和感を口にできず、重大な怪我につながる選手は少なくない。出場機会を失ったり、指導者に怒られたりする不安から正直に話せないためだ。
「うちのチームは、子どもも保護者も少しでもいつもと違う感覚があると、遠慮なく指導者に報告してくれます。どんなに理にかなった投げ方をしていても、全力で投げ続けたら人間の体は故障します。大事に至る前に、わずかでも異変があればストップする必要があります。体を休めた後は試合にも出られますし、チームに居づらくなることもありません」
もちろん、辻監督をはじめとする指導者たちは選手に異変がないか日々、目を配っている。ほとんどが子どもたちから報告を受ける前に、疲労や違和感を見抜いている。
「子どもたちの動きや仕草を見れば、ストップをかけるタイミングは分かります。以前、腰が痛いという子どもを保護者が病院に連れて行きました。『レントゲンを取ったら異常ありませんでした』と報告を受けましたが、私は違う病院に行ってMRIを取るように伝えました。MRIの結果、疲労骨折の兆候が見られると診断されました。子どもがチーム練習の内容で腰を痛めることはありません。コロナの自粛期間に自宅で素振りをし過ぎたそうです。素振りは、やり方を間違えると腰を痛める原因になってしまいます。指導者が選手の怪我を予防するには休養を設けるだけではなく、日々の観察と何でも口に出せる雰囲気作りが必要だと思います」
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