「『素振りをしてこい』の前には『勝手に』が含まれている」
何気なく子どもたちにかけている保護者の言葉が、成長のチャンスを妨げている可能性がある。2018、19年に頂点に立つなど全国大会常連で、楽天・則本昂大投手も輩出した滋賀・多賀町の小学生軟式野球チーム「多賀少年野球クラブ」を率いる辻正人監督の連載第7回は「子どもとの向き合い方」。保護者に向け「子どもに素振りをしてこいというのは一番ダメ」と注意を呼びかける。
「素振りをしてこい」。少年野球をする子どもを持つ保護者であれば、一度は口にした経験があるのではないだろうか。辻監督は、その言葉が「一番ダメ」と力を込める。
「子どもに素振りをしてほしいのであれば、少なくとも『素振りを見ようか』『一緒に素振りをしよう』と声をかけなければいけません。なぜなら、『素振りをしてこい』の言葉の前には、『勝手に』が含まれているからです。子どもたちは『勝手に素振りをしてこい』と捉えます」
辻監督は、命令や強制による行動に効果はないと考えている。仮に、自ら素振り100回を日々の目標に掲げた子どもに、さぼっているのを指摘するとしても、「素振りしてこい」と声をかけるのは無意味で、時にデメリットさえあるという。
「暗い中で外に出て1人でバットを振ってもおもしろくないので、真剣に取り組まないのは明らかです。力を入れるポイントも考えずに惰性でバットを振ると、怪我につながるリスクもあります。それなら、保護者が『30秒で何回バットを振れるかやろう』と一緒に外に出れば、子どもは自然と力強くバットを振ります。あっという間に、50回、100回に届くはずです。前日よりも回数が増えれば、達成感もあります」
思っていることは「グラウンド内で子どもたちに伝えてほしい」
子どもに期待するあまり、アドバイスが増えがちな保護者も成長する機会を奪う可能性がある。辻監督が特に注意を促すのが、声をかけるタイミングだ。
「保護者には、野球に関して思っていることはグラウンドの中で子どもたちに伝えてくださいと言っています。帰りの車の中や帰宅してからなど、練習終了から時間が経ってから反省を促しても根本的な解決にはなりません。それから、試合の時や試合が近い時期に保護者が口を出すのは逆効果です。子どもが考えるべきは相手なので、自分のフォームを気にしたらペースが狂ってしまい力を発揮できません」
もう1つ、辻監督が保護者に気を付けてもらいたいポイントに挙げるのが“脅し文句”だ。子どもたちの積極性や自主性を損なうと危惧している。
「『監督に言うから』というように、監督が怖い存在と誤解を生む発言はしないように保護者に伝えています。指導者を好きになれば、自分から野球の練習をするようになります。自然と上手くなるわけです。学校でも、先生に好感を持てば、その科目の成績が自然に上がるのと同じです。子どもたちの上達には、どれだけ指導者を好きになってもらえるかが大切になります」
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