外遊び“制限”の時代…子どもの運動能力をどう高める? 技術向上を刺激する「リズム感」

文:川浪康太郎 / Kotaro Kawanami

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「リズムトレーニング」をキッズ年代へ…常磐軟式野球スポーツ少年団の取り組み

「外遊び」が何かと制限されるようになった昨今、子どもの運動能力低下が懸念されている。福島・いわき市の少年野球チーム「常磐軟式野球スポーツ少年団」は、選手の運動能力向上を目的に、6年ほど前からキッズ年代(未就学児~小学3年生)で「リズムトレーニング」を取り入れている。プロ野球や野球以外の競技でも採用されている、音楽を使ったトレーニング。どんな効果があるのか、そしてキッズ年代で取り入れる意図は何か。練習の模様を取材し、秘密を探った。

 6月下旬、いわき市内の小学校で行われた「常磐キッズ」の練習を訪れると、梅雨の合間の暑さの中、16人の選手と入団体験に参加した児童がグラウンドを駆け回っていた。ランニングとストレッチを終え、リズムトレーニングがスタート。選手たちは8ビート(8分音符をベースとしたリズム)の小気味良い音楽に合わせて、あらゆる動きを交えながら40分近く体を動かした。

「ライン」と呼ばれる進行方向の目安となるロープを地面に敷き、そのロープに沿って前進または後進しながら体を動かす。肩を前後に回しながらジャンプして進んだり、左右の足を入れ替えながら跳んだりと、動きはさまざまだ。

「今は昭和の頃と比べると、子どもたちが外で遊ぶ機会が少なくなってきています。木登りや山での遊びなども“危険”と見られて制限され、安全が確保された上で遊ぶ環境になった。その分、子どもの運動能力は昔より低下していると感じます」

 危機感を覚えた常磐キッズの村田繁人監督は、6年ほど前、動画サイトで横浜DeNAベイスターズがリズムトレーニングを取り入れていることを知り、トップチームを率いる天井正之監督の薦めでスポーツリズムトレーニング協会の講習会を受講した。以降、チームの定番のトレーニングメニューとなっている。

学校の遊具も活用…“逆上がり”が野球の能力を上げる手段に?

肩甲骨や股関節の機能向上にもつながる【写真:高橋幸司】

 村田監督は「野球の練習だけでは野球のパフォーマンスは上がりません。低学年のうちに体を自分の思うように動かす練習をして、運動能力が伴ってようやく野球の技術につなげることができる」と狙いを口にする。リズムに合わせて次々と異なる動きをするのは、この年代にとっては容易ではない。それを継続することで、おのずと運動能力が身に付く。

 その上で「遊びを増やす」ことも狙いの1つだ。普段の練習では、リズムトレーニングのほか、鬼ごっこや鉄棒、上り棒などの遊具を使ったトレーニングにも取り組んでいる。「逆上がりができる子は野球の能力も高い傾向があります。自分の体をうまく使える子は、いろいろな技術を吸収できるんです」と村田監督。遊び感覚で運動能力を養う工夫を凝らしている。

 リズムに合わせる動きを考案しているのは、インストラクターを務める永井知子さん。動画サイトやSNSの動画を参考にしながら「アップデート」を手がけており、「リズム感と体幹が鍛えられる。肩甲骨や股関節のストレッチを兼ねた動きや、野球でも見られる手と足をバラバラに動かす運動も取り入れながら、楽しくやっています」と話す。

 実際に、常磐キッズの選手たちは、最近の子どもが苦手としがちなブリッジを難なくこなすなど、運動能力の高さをうかがわせた。「遊び」を生かしたトレーニングが、子どもたちの未来をつくっていく。

【実際の動画】ブリッジが上手な「常磐キッズ」 肩甲骨も柔らかくなる“リズムトレーニング”

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