「ミスに怒鳴る」大人に警告カード 監督は試行錯誤…独自ルールで広がる“新時代指導”

「ミスを怒らず、助け合う」少年野球大会…ミズノドリームカップの効果
「ミスを怒らず、みんなで助け合う」。そんなコンセプトの大会だからこそ、新たな気づきがある。大手スポーツメーカーのミズノが主催する少年野球大会「ミズノベースボールドリームカップ・ジュニアトーナメント1stステージ」が8月8日〜11日に兵庫・淡路島で開催され、各地の予選を勝ち上がった59チームが、12月のファイナルステージ出場権8枠をかけて熱戦を繰り広げた。学童野球の監督も人間である以上、声を荒げたくなる場面はあるもの。独自コンセプトの中、どう子どもたちを“野球好き”に導いているのか、試行錯誤に迫った。
「ミズノドリームカップ」は今回で開催5年目、淡路島が舞台となるのは2年目となる。全国大会でレベルが高いのはもちろんだが、「指導者は怒らず、励まし合う」「ユニホーム・用具が揃っていなくても参加OK」「10番打者制・リエントリー制」など、選手が伸び伸びプレーできるユニークな施策を施しているのが特徴だ。会場にはストラックアウトや打撃計測、グラブ作りなど、野球の魅力を味わえる体験スペースも用意され、多くの参加者・来場者で賑わっていた。
そうしたコンセプトを掲げる背景には、「野球離れ」「スポーツ離れ」への危機感がある。特に、いまだ根強い怒声・罵声の“威圧的指導”は、子どもたちの萎縮、さらには競技人口減少につながる大きな問題だ。
そこで、同大会では初日に監督を集めての「アンガーマネジメント講習」を実施。試合中も、不適切な言動があった場合は笛が鳴らされ、「みんなで助け合おう!」などと書かれたメッセージカードが掲出される。「講習では熱心にメモを取ったり、質問をしてくださったりした監督さんもいました。ただ『怒ってはいけない』というだけではなく、子どもたちが野球を楽しめる“文化”の醸成を、大会を通して発信していければ」と、ミズノ社グローバルマーケティング本部の櫻庭勇貴さんは語る。

実際に参加している指導者たちも、担うべき“役割”を自覚している。大阪オールスターズJr.の井越大輔監督は、「たとえば練習中に子どもたちの“オン・オフ”の切り替えができていないときなど、つい声を荒げたくなりますが、そういう時に『一度間を置いて冷静になる』といったところは勉強になりました」と講習について振り返る。チームは結成6年で所属選手が100人以上といい、「今日も学年同士で交流ができ、楽しい雰囲気で試合ができた。中学、高校と長く野球を続けてもらえる指導を心がけていきたい」と語った。
熊本・託麻フェニックス少年野球クラブの草野穣監督は、10年以上の指導歴を持つベテラン。「自分は“褒める”とは真逆のところがあったんですが」と笑いつつ、「礼儀や弱気なプレーについては厳しく言う時もありますが、厳しいだけでは今の子たちはシュンとしてしまう。コーチ陣とフォローし合いながら指導しています」という。そして、球界の将来のためにも、「ミズノさんの掲げるようなコンセプトは、今後も続けていくことが大事」と話した。
怒らないルールを“逆活用”「子どもたち同士で声かけを」

指導者が怒れないというルールを逆手に取り、うまく活用できているというのが、栃木・真岡クラブの舘野瞬監督だ。「昨年この大会に参加して、ミスをした際に、子どもたち同士でどうコミュニケーションを取らせるかが大事だと感じた」といい、仲間からどんな声をかけてもらうのがよいのか、選手同士で話し合わせたという。
「たとえば、ストライクが思うように入らない投手でも、『いい球行ってるよ、どんどん腕を振っていこう』と前向きな言葉をかけられるほうが良い子もいれば、『ストライク入れてこうぜ』と発破をかけられた方が燃える子もいます。十人十色、感じ取り方が違うんだというのは、この大会を通じてすごく勉強になりました」
選手がエラーをしても、「自分の指導が足りなかった、次はどういうメニューをさせようか、という方向に意識が向くので、そもそも怒りの感情が湧くことがない」と語るのは、千葉・ASAI KIDS☆UNITEDの野口孝之介監督。では、逆に「必ず選手を褒める」のはどのようなときか。
「特に大会が少なくなってくるこれからの時期は、6年生の1つのアウト、1本のヒットはきちんと褒めるようにしています。『うまく打てていたから、次のステージでも通用するよ』と。そういう一言が、中学に行ってからの自信につながると思うからです」

昔のように、頭ごなしに怒るだけでは通用しない時代。逆に“制約”があるからこそ、新たな指導の考え方や発見が生まれる。学びを生かして、選手たちをどう未来の球界の担い手に育てていくか。中学、高校、さらにその先を見据え、大人ができる工夫はいろいろとあるはずだ。
◎FINALラウンド出場チーム(12月5日、6日開催)
東村山3RISEベースボールクラブ(東京)
ドリームボーイズ(愛知)
新庄北イーグルス(富山)
春江ドリームボーイ(福井)
ブラックシャドウズ(大阪)
東播ナインストリーム(兵庫)
西原村学童野球クラブ(熊本)
菱形U&U(熊本)
【実際の写真】選手が笑顔で“伸び伸びプレー” 指導者が怒らない大会「ミズノベースボールドリームカップ」





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