滋賀・多賀少年野球クラブの辻正人監督が履正社で指導
“打倒・大阪桐蔭”のヒントは日本一の軟式野球チームにあるかもしれない。2019年夏の甲子園を制した大阪の強豪・履正社高が、滋賀・多賀町の少年野球チーム「多賀少年野球クラブ」の辻正人監督に指導を受けた。今年の選抜高校野球大会を制した大阪桐蔭を筆頭に、強豪ひしめく大阪。3年ぶり甲子園切符を掴むための“秘策”が伝授された。
履正社の練習グラウンドに、小学生軟式野球チーム「多賀少年野球クラブ」を率いる辻監督が特別ゲストとして招かれた。辻監督は毎年のようにチームを全国大会に導き、2018、19年には「小学生の甲子園」と呼ばれる「高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」で連覇を果たしている。
履正社は「打倒・大阪桐蔭」を掲げて、今春就任した多田晃監督のもと新たなスタートを切った。春季大阪大会では、手応えをつかむと同時に課題も浮き彫りとなった。7試合で計70得点と自慢の強力打線は存在感を示したが、大阪桐蔭との決勝戦では2-3で惜敗。選抜大会決勝でも先発した2年生左腕・前田悠伍投手を攻略できなかった。多田監督は「前田投手のような投球をされた時に、何とか得点に結びつく攻撃をしないといけない」と接戦で1点を奪う重要性を痛感した。
多田監督が就任してから、チームは「常に5点以上取ろう」を合言葉にしてきた。そのために重点を置いてきたのが機動力。長打や連打がなくても得点を重ねられるよう、走塁練習や走り込みに時間をかけてきた。大阪桐蔭戦でも2つの盗塁を決め、練習の成果は現れた。
無死一塁から1死三塁をつくる“多賀野球”を伝授
一方で、前田にけん制で2度刺されるなど課題も残った。「もうワンランク上の盗塁、走塁を目指す」。そのために白羽の矢を立てたのが、野球の戦術を小学生に熟知させ、隙のない走塁で全国制覇を成し遂げた多賀少年野球クラブの辻監督だった。辻監督の次男・心薫(もとまさ)さんは履正社出身で、「1番・三塁」として2014年の選抜大会準優勝に貢献している。当時、コーチだった多田監督は、親交のあった辻監督に指導を依頼した。
「少年野球と高校野球という年齢は関係なく、辻監督の指導はうちのチームにプラスになると思いました」
辻監督による約3時間の指導で大半を占めたのが、無死一塁からの練習だった。ここから1死三塁をつくって得点するのが、“多賀野球”の得意パターン。辻監督は、盗塁したり相手のミスを誘ったりと、チャンスを拡大させる様々な方策を履正社ナインに伝授。「1死三塁をつくれば内野ゴロでも得点できます。相手投手のクセは遅くとも3回までに見抜いてチームで共有することが大切。打力や体格では大阪桐蔭にも負けていませんから」と語った。
攻撃で1死三塁をつくるように工夫を凝らし、守備では1死三塁をつくられないように考える。辻監督の教えを受け、履正社の選手たちに掛け声や話し合いが増えた。「見るからに変わっていました。ベンチ内でも議論が増えましたよね」と多田監督。プロも注目する光弘帆高内野手は「考えというか、意識が変わりました。今までは『打ってつなぐ』という打撃を中心に考えていましたが、得点を取るために先の塁に走者を進める大切さが分かりました」とうなずいた。
「走塁に対する意識が定着すれば、恐ろしいことになりますよ」と辻監督。履正社の“秘策”は今夏、明らかになる。
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