野球指導のプロが伝授する「効果的な素振り」 少年野球の“打てない”を解決する方法

公開日:2022.06.06

更新日:2023.11.30

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 バッティングが上手くなるために、誰もが基本練習として取り入れているのが「素振り」です。ただバットを振るだけの動作ですが、奥が深いのも確か。初心者を含めた子どもたちに「しっかりバットを振れ!」とは言えても、なかなか具体的なポイントを説明できずに悩んでいる指導者もいるのではないでしょうか。

 ここでは“野球指導のプロ”が、効果的な練習法を伝授。高校野球の強豪・大阪桐蔭の元主将で、「ミノルマン」としてYouTubeや野球塾で技術を伝えている廣畑実さんは、打撃上達に直結する“2種類の素振り”を勧めています。さらに野球用品メーカーのスタッフが、素振りにオススメのバットも紹介しています。

目次

専門家プロフィール

    ○廣畑実(ひろはた・みのる)
    1993年8月27日、大阪府枚方市出身。大阪桐蔭高2年春にレギュラーとして甲子園出場。3年時には主将を務めた。その後は亜細亜大、JR東海とアマチュアの強豪チームでプレー。現在は大阪・八尾市を拠点とする野球塾「Amazing・ベースボールパートナー」の代表として、子どもたちの指導に当たる傍ら、野球YouTuber「ミノルマン」としても活動している。

1.素振りの目的とは

 まず、なぜ素振りを行うのか基本的な部分を理解しましょう。スイングを繰り返す反復練習によって、技術的・身体的・精神的にレベルアップを図ることができます。

1-1 バッティングフォームを固める

 素振りは、相手投手の投げたボールに対応する技術を身に付けることが狙いとしてあります。繰り返しスイングすることで、対応できる打撃フォームを固めていきます。

1-2 バットを振る筋力をつける

 繰り返しバットを振ることは、スイングに必要な上半身・下半身の筋力を鍛えることにつながります。必要な筋力がつくことで打撃フォームも安定します。

1-3 打撃動作の再現性を高める

 必要な筋力がつきフォームが固まれば、理想とするスイングの再現性を高めることにもなります。逆に誤ったやり方で素振りをしていくと、間違ったフォームが身についてしまうリスクもあります。

1-4 試合前の状態を確認する

 正しい素振りは打撃力アップはもちろん、調子の波を抑える効果があります。試合前に行うことで、体の開きがないかなどの状態チェックとして使うことができます。

2.素振りのフォームのチェックポイント

 素振りの効果がわかった上で、スイングする際に重要なポイントを意識すると、より効果が発揮されます。大きく分けて6つのチェックポイントがあります。

2-1 構え

 肩が力んだりしないよう上半身をリラックスさせて、自分がバットを出しやすい構えを心がけましょう。お勧めは、初めからトップ(スイングを開始する位置)に手を構えること。余計な動きや体のブレが少なくなります。

2-2 目線

 ボールとバットが当たる「インパクトの瞬間」の場所を見ながら素振りをする人がいますが、実戦において投手の球を手元に来るまで見ていることは、ほぼありません。バットの届く範囲が狭まらないよう、前に視線を向けてのスイングを心がけましょう。

2-3 軸足へのタメ

 バットに当てたいがために、ボールを迎えに行くように体を前に突っ込ませてバットを振るのはNG。まずはしっかりと軸足(捕手側の足)に体重を乗せて「タメ」を作ってからスイングすることが大切です。

2-4 トップの位置

 前足(投手側の足)が地面についた時に、トップの位置に手があることが大切です。前述のように、初めからトップの位置に手を構えておくことで余分な動きを減らせます。自分のトップの位置(手の位置)を逐一、目で確認しながら振るのも良いでしょう。

2-5 体重移動

 軸足から前足への体重移動は、打球に力を伝えるための重要なポイントです。上半身と下半身が同時に前に出てしまうのは悪い例。自分の腰とお尻を投手側にスライドさせるようなイメージで移動させましょう。

2-6 スイング軌道

 内側からバットを出す「インサイドアウト」の軌道でスイングをすることが重要なポイントです。バットが外に遠回りするような振り方だと速球に対応できません。

3.素振りをする際のチェックポイント

 素振りをする際の各動作に対する考え方がわかったところで、次は実際に練習する際に持っておきたい意識を見ていきます。重要なのは、主に3つです。

3-1 コースや高さをイメージする

 投球が来るコースや高さをイメージしてスイングしましょう。視線を下に向けたり、打つポイントだけを見たりするのではなく、投手方向を向いて振ることが欠かせません。

3-2 試合状況を意識する

 相手投手をイメージするのと同様に、試合状況に応じて、どんな球に対してどのようにアプローチするのかもイメージしておくと、より実戦に生かせる素振りになります。

3-3 量より質を重視する

「毎日100回」をノルマとしたところで、誤った体の使い方で振っていては意味がありません。自分がどういうスイングをしているか、鏡や動画でチェックしながら行うのがお勧め。コースやバットの軌道を意識すれば、100回のスイングでも「100回以上」の効果を得られます。

4.素振りの種類

 単に素振りと言っても、様々な種類があり、それぞれに目的や得られる効果が違います。大きく分けても、以下の8通りがあります。一連のスイング動作の中で、何が課題かを考えながら最適な素振りを選ぶことが肝心です。

4-1 ウォーキング素振り

 前に進みながらスイングする練習で、体重移動のコツをつかみます。軸足を前足の後ろに交差させ、そこから前足を前にステップさせてバットを振る。これを繰り返します。

4-2 片手素振り

 文字通り、片手だけで行う素振りです。バットを握った時に下側にくる手(投手側の前の手)だけで振ることで、引き手を使うコツをつかめて、スイング時の体の開きを抑える練習になります。

4-3 逆手素振り

 投手側の手を上、捕手側の手を下で握り、普段バットを握る両手を逆にしてスイングする練習です。体の開きを抑えたり、スイング軌道を修正したりすることができます。

4-4 座り素振り

 椅子などに座りながら行う素振りです。上体がブレることなくスイングでき、バットが内側から出る「インサイドアウト」を身につけるのに効果があります。

4-5 逆打席素振り

 普段、自分が立つ打席とは逆の打席、つまり右打ちなら左打席、左打ちなら右打席で素振りを行います。普段とは違う体の使い方、筋肉の使い方で、体のバランスを整えます。

4-6 股割り素振り

 股をできるだけ大きく開いて素振りをする練習です。腰をスライドさせて体重移動をするコツや、太もも内側を絞りながらスイングするコツをつかむ効果があります。

4-7 高速素振り

 10スイング程度を連続で素早くバットを振る練習です。腕だけでこねくるように振るのではなく、1振り1振り、体重移動をしっかり繰り返しながら振るのがポイントです。

4-8 スロー素振り

トップの位置、スイングの軌道、前足のステップ、体重移動など、1つ1つの動作を確認しながらバットを振ります。ゆっくりなので、自分の特徴や欠点に気づくことができます。

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5. 軽いバットと重いバットの素振りの違い

 ここまでお伝えしてきた素振りのメリットや基本的なやり方・バリエーションを踏まえ、お勧めする素振りの練習のコツを紹介します。バットも製造する野球用品メーカー「美津和タイガー」のスタッフ・古屋政己さんが推奨するのは、軽いバット。バランスが取れるようであれば「おもちゃのバットでも良いと思います」とも言います。重量によってメリットは違います。

5-1 軽いバットで素振りをするメリット

 軽量であれば、自分でバットをコントロールしやすく、正しいフォームを身に付けやすいという利点があります。もちろん、軽いバットだと手や腕だけを使って振る「手打ち」になってしまうリスクはありますが、しっかりと下半身も使って振ることを心がければ、「速さを体感しながらスイング速度を上げる効果が期待できる」と説明しています。

5-2 重いバットで素振りをするメリット

 一方で、重いバットを使って効果的に素振りをする方法も。スイング軌道を理解したり、確認したりする時は、重みを生かしてバットのヘッドを走らせることで、自らが持つ筋力以上の力を乗せることができます。この際、余計な力を抜いて「上から振り下ろすイメージでバットを振るのが大事」だといいます。

6.指導のプロが実践する打撃向上につながる素振り

 では、具体的にはどんな素振りをすれば効果的なのでしょうか。廣畑さんが推奨する2種類とは「9分割」と「金曜日の+α」です。

6-1 9分割×各10回

 ストライクゾーンを高低と内外角で9分割し、全ての高さとコースを1か所ずつ、それぞれ10回振る方法。投手と対戦している状況を頭に描き、右打者であれば、外角は右翼方向、真ん中は中堅、内角は左翼とコースによって打球を打ち分けるイメージを持つことが大切だと言います。

6-2 金曜日の素振り

 廣畑さんが、育成世代の子どもたちに特に勧めているのが「金曜日の素振り」。土日に試合をする選手が多いことから「金曜日のスイングを間違えると、試合に影響が出ます」と注意を呼び掛けています。9分割の素振りと違い、顔や胸が投手側に向かないように横を向いて振ったり。真下にバットを振る「縦振り」をしたりすること。へその前でバットと手首が返るような感覚を染み込ませることで、体が開くのを防止できるといいます。

7.野球を上達させる素振りのまとめ

 やみくもに回数だけをこなす素振りでは、効果を得ることは難しいでしょう。特に、野球未経験者や初心者など、ほとんどボールを打ったことがない子どもは「バットの軌道」と言われても理解できません。廣畑さんも「素振りの仕方を間違えると打撃は上達しません」と断言しています。 

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(川村虎大 / Kodai Kawamura)