女子野球のレジェンドがなぜ法人設立? 次世代に伝えたい“プレーし続ける道”

公開日:2022.12.12

更新日:2023.12.26

文:川村虎大 / Kodai Kawamura

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埼玉西武ライオンズ・レディースの里綾実が法人設立、初のイベント開催

 女子野球のワールドカップ(W杯)で、3度のMVPを獲得している埼玉西武ライオンズ・レディースの里綾実投手が、新たなチャレンジを進めている。昨年12月に立ち上げた一般社団法人「野球はみんなのスポーツ」が、11月26日に初のイベントを開催したのだ。女子野球の環境を整えるため、自らプレーを見せ、指導し、意見を交換と、1人で何役もこなしている。

 午前中に降っていた小雨も徐々に上がり、午後からは太陽が顔を出したグラウンドで、里は慌ただしく動いていた。「慣れないことばかりで、正直大変です」という言葉とは対照的に、笑顔からは充実感が伝わってくる。市営浦和球場(さいたま市)で里は「未来を創る!女子野球イベント」を主催しながら、マウンドにも立った。午前中は女子実業団「ZENKO BEAMS」とのエキシビションマッチ、午後からは集まった女子選手とディスカッションを行い、交流を深めた。

 なぜ、里は現役でプレーしながら、この一般社団法人を立ち上げたのか。2019年、日本女子プロ野球リーグを構想外による退団となり、野球をする場所を探していた。2020年4月に埼玉西武ライオンズ・レディースに入団したが、新型コロナウイルスの感染拡大で社会は“自粛”一色に。翌2021年には女子プロ野球が事実上、消滅した。里は女子野球界を開拓し、けん引してきたからこその想いがあった。

「環境ができるのを待っていても、いつになるかわからない。いつまでたってもできないかもしれない」

 女子プロ野球に逆風が吹く中、高校の女子硬式野球は盛り上がりを見せていた。全国高等学校女子選手権の決勝は昨年、初めて男子と同じ甲子園が舞台となった。さらに選抜チームが、イチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)の率いる草野球チームとエキシビションマッチで戦った。

 これまで上のカテゴリーに目標がなく、小学生や中学生で野球をやめていた女子選手には、高校野球の聖地でプレーという大きな夢ができた。ひと昔前と比べ、女子野球の環境は確実に変化しているが、里は十分ではないと感じている。「少しでも環境が良くなれば、野球をやりたいという女子が増えるのではないか」。そこで最初に起こした行動がこの「一般社団法人 野球はみんなのスポーツ」の設立だった。

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