熱中症予防に“塩分タブレット”は正解? 飲み方次第で逆効果も…夏場の水分補給の鉄則

更新日:2026.08.03

文:内田勝治 / Katsuharu Uchida

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スポーツドクターが夏場のスポーツドリンク摂取について解説

 猛暑の中で行われる夏場の少年野球において、熱中症予防のための水分補給は文字通り「生命線」だ。7月30日、野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」が主催するオンラインイベント「熱中症から子どもを守る 夏の栄養と水分補給講座」が開催され、日本スポーツ協会公認スポーツドクターで内科医の岡田有史さんが、医学的な視点から正しい水分補給の知識を明かした。

 熱中症予防の水分補給として、日本スポーツ協会では、0.1~0.2%の塩分(食塩相当量が100ミリリットル中0.1~0.2グラム)と糖質を含んだものを推奨している。一般的なスポーツドリンクはこの濃度に合わせて設計されているが、現場では「甘すぎて飲めない」「後味が苦手で水や麦茶を飲みたがる」という子どもたちも少なくない。そうした場合、水やお茶と一緒に塩分タブレットを摂取し、汗で失われたカリウムやナトリウムを補給するケースが見受けられる。

 しかし、岡田さんは、この対策に潜む思わぬ落とし穴を指摘する。

「水ばかりを飲み過ぎると、血液中の塩分濃度が低くなりすぎて低ナトリウム血症(体内の水分量に対してナトリウム量が少ない状態)となり、頭痛や嘔吐、筋肉のけいれんを引き起こす場合があるので、塩分タブレットを使うこと自体は問題ありません。ただ、一緒に飲む水の量を間違えると、かえって体に悪影響を与えるリスクがあります」

 塩分タブレットは1粒あたり0.1グラム程度の塩分が入っており、適切な塩分濃度(0.1~0.2%)を胃の中で再現するには、およそ100ミリリットル以上の水分が必要となる。もしタブレットだけを口にして少量の水しか飲まなかった場合、胃の中で非常に濃い塩水ができあがる。ラーメンのスープを飲んだ後に喉が渇くのと同様の現象が体内で起き、かえって脱水を助長したり、胃腸に負担をかけたりすることになるという。

スポーツドリンクは薄めずに飲むのが鉄則

塩分タブレットの摂取方法にも注意が必要だ【写真:高橋幸司】

 また、甘いスポーツドリンクを水で半分に薄めて飲ませるという対応もNGだという。塩分濃度が半分(0.05%前後)に低下してしまい、十分な熱中症予防効果が得られなくなるためだ。スポーツドリンクは薄めずに飲むのが鉄則となる。

 では、スポーツドリンクが苦手な子どもにはどう対処すべきなのか。岡田さんは「市販のスポーツドリンクは50種類近くあり、甘さや成分も様々。フレーバーが控えめなものや、すっきりとした飲み口の製品を選べば飲めるケースが多い」と解説する。一般的にコンビニで売られているスポーツドリンクを基準に、味覚や浸透圧など、選手に合うかどうか様々なタイプを試してみるのが良いという。

 どうしても水やお茶しか飲めない場合は、塩分タブレットを摂取する際に、必ず十分な量の水(コップ1杯程度)をセットで飲むことを習慣づける必要がある。

「夏場の水分補給の目的は、1番が脱水の予防、2番はエネルギー補給、そして3番は体温を下げることです。体温に近い飲み物の方が吸収が早いと勘違いされがちですが、同じドリンクであれば、冷たい方が体の温度も下がるので、クーリングの効果があり、吸収も早いです」

 これには、ゲスト出演した東京の学童野球チーム、町田玉川学園少年野球クラブの菊池拓平監督も「意外ですね」と驚きを隠せない。「冷たい物を飲むとお腹を壊す」と、冷えたドリンクを敬遠するケースはあるが、良かれと思ってやっていた対策が逆効果になっては元も子もない。

 菊池監督は「この日得た情報をしっかりと現場に還元していけば、この夏は乗り切れるんじゃないかと思います」と、早速チームに持ち帰って実践することを約束した。子どもたちが猛暑の中で安全にプレーするためには、現場を預かる指導者たちの医学的な根拠に基づいた、正しい知識のアップデートが不可欠だ。

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