
根本美緒さんが少年野球で見つけた「全力投球」の子育て論
お茶当番や親の負担といったイメージは令和の時代も根強いが、少年野球にはそれらを超える、素晴らしい景色や喜びがある――。今月12日に『少年野球が私たち親子を育ててくれた 家族が「ワンチーム」になれた理由』(竹書房)を上梓した、フリーアナウンサー・気象予報士の根本美緒さんの発売記念イベントが、都内で開催された。TBSのお天気キャスターとして人気を博し、3姉弟(長女、次女、長男)の母で、現役の東大大学院生。仕事、家事・育児、そして学業までこなす“三刀流”の根本さんが、親子で経験した少年野球への思いについて語ってくれた。
本著の誕生は、根本さんの3人の子どもたちが少年野球をする中で、努力を重ねた経緯や得た気づきをSNSに投稿していたことから始まる。飾らない等身大のエピソードが出版社の目に留まり、「保護者目線のこうした話は、意外と世の中に伝わっていないし形になっていない」と声をかけられたことがきっかけだという。
同時期に侍ジャパン「日本代表」元監督の栗山英樹さん(日本ハムCBO)から、少年野球の人口が減少している現実と、「どうしてもお母さんにとってネックになるもの(イメージ)がある」という話を聞いたことも大きな後押しとなった。「お母さんたちに、野球を通じて見られる素晴らしい景色や、子育てが楽しくなるということを伝えられたら」と考え、執筆を決意したという。
根本さんは少年野球チームの存在を、「大家族みんなで子育てしているという環境、下町にいるような空気感。今の時代にとても貴重な組織」と表現する。親子で少年野球に携わってきた8年の日々は、「温かなコミュニティーの中で、親子で熱狂する大人の文化祭のような時間だった」と振り返る。
とはいえ、当初は少年野球の仕組みをよく分からず、「土日には普通に家族旅行の予定を詰め込んでいた」ことも。当時小学3年生だった長女に「なんで野球があるのに旅行を入れるの!」と怒られたこともあったそうで、“野球を始めたばかりのママあるある”も披露。
「そこまでして『土日は野球がしたい』という娘の熱意に触れるうちに、少しずつ意識も変わった。この子がやりたいことを最優先にしてあげよう」。そんな母の意識改革は、やがて家族全員のライフスタイルをも変えていった。「今では土日に仕事すら入れない“野球最優先”が我が家のスタンダード」と根本さんは笑う。
目指すのは、子どもを包み込む“布団”のような安心感

根本さん自身にも子育てに対する新しい気づきが生まれた。以前は「子どもは何でもバランスよくやったほうがいい」と思っていたそうだが、好きな野球を徹底的に追求し、それが自信やアイデンティティーになっていく姿を見て、考えが180度変わったと話す。
「1つのことに全力投球するって、なんて素晴らしいことだろう、と。自分で見つけた道を突き進み、成長していく姿を見せてくれた野球に感謝しかありません」
もちろん、すべてが順風満帆だったわけではない。「部員不足に頭を悩ませたり、チームを運営する上でのトラブルに巻き込まれたりすることもあった。すべてが楽しく、ワイワイしていたかというと、決してそんなことはない」とリアルな舞台裏も明かす。
思春期を迎えた長女からは、一時期「(試合に)応援に来ないで」と言われ、親としての関わり方に戸惑ったこともあったという。完璧主義でひっこみ思案だった長女なりの、恥ずかしさや葛藤と受け止め、根本さんはあえて遠くから見守ったり、声をかけずに一歩引いた距離を保ったりしたことも……。
それでもキャプテン職を全うした長女から引退後、「ママが見に来たときに活躍した姿を見せられたことが、何より嬉しかった」と手紙で伝えられ、「『来ないで』と言いつつも、本当は一番見てほしかった、最後にそんな嬉しい本音を明かしてくれた」と根本さんは目を細める。
だからこそ、いま思春期の子を持つ保護者に、「『見に来ないで』と言われて、行くべきか悩む方も多いかもしれませんが、できるだけ応援に行ってあげてほしい。子どもの言葉の裏には、きっと『見ていてほしい』というピュアな想いが隠れていることもある。親が『いつでも後ろにいるよ』という布団のような安心感を示し続けることが、子どもの背中を一番強く支える気がします」とメッセージを送ってくれた。
家族の中だけでは教えられない「感謝」や「協調性」を学んだ
根本さんは野球というスポーツそのものの奥深さについて、こう続ける。
「野球って、いろんなことを瞬時に考えなきゃいけない、とっても難しいスポーツ。しかしその難しさがあるからこそ、子どもたちは自分で考え、仲間と相談し、実践する。その工程こそが脳を活性化させ、成長を促すのではないか。同時に一人では絶対にできないスポーツだからこそ、仲間との絆やつながりも深くなる。家族の中だけでは教えられない『感謝』や『協調性』を、たくさん学ばせてもらいました」
最後に根本さんは、「子どもに何かスポーツをさせたいと考える保護者や、少年野球に不安やハードルの高さを感じている方に、少年野球に関わる中で感じる悩みや共通の思いに対して、『あ、なるほどね、こういう風にすればいいのかな』と思えるような、解決のヒントを1つでもこの本で見つけてもらえたら」と締めくくった。
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