中3で衝撃の145キロ…「両投げ投手」が東京Dで“初体験” 左も130キロ台、操る9球種

文:尾辻剛 / Go Otsuji

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ジャイアンツ杯準V…多摩川ボーイズ・原悠翔が語る“二刀流”のメリット

 中学生右腕が145キロの速球を投げ込んだ。この投手、左でも130キロ台中盤をマークする両投げだ。中学硬式野球の日本一を決める「第20回全日本中学野球選手権記念大会 ジャイアンツカップ」は17日、東京ドームで決勝戦が行われた。ボーイズリーグ代表の多摩川ボーイズ(ジャイアンツ U15 ジュニアユース、東京)は北関東地区代表の取手リトルシニア(茨城)に1-3で惜敗。初優勝を逃したが、2番手で登板した原悠翔投手(3年)が最速145キロをマークしてスタンドをどよめかせた。

「球速は特に意識せず、打者を打ち取ることだけを考えていました。スピードが出ていたことは、あまり分からなかったです。東京ドームのマウンドはきれいで投げやすかったです」

“両投げ左打ち”の原は、0-2の5回から2番手で登板。この時、グラブは右手にはめていた。準決勝で3回1/3を無失点救援した左腕として挑んだが、この日は制球がどうにも定まらない。先頭打者に四球。続く打者は見逃し三振に仕留めたが、そこから連続四球で満塁のピンチを招き、押し出し死球で1点を失った。

 ここでベンチに呼び戻され、グラブを右投げ用に変更。右腕として仕切り直しの勝負に挑むと、これまでの自己最速142キロを上回る143キロ直球を連発して後続を断ち、ピンチを脱した。「自分が出した走者だったので、最少失点で切り抜けようという気持ちで投げました」。続く6回にはさらに出力アップ。最速145キロを2度計測し、3者凡退に仕留めた。

 元々、右利き。幼少期から球は右で投げていた。小1の時、エンゼルス時代の大谷翔平投手が試合後、右肩をアイシングしながら、サインボールを左手でスタンドに投げ入れている姿を見て「自分も『やりたい』と思って、遊びで左で投げるようになりました」という。転機は小4。右肘を故障して右では投げられない時期が訪れ、本格的に左投げの挑戦を始めた。

 その後、右肘は完治し、右での投球を再開。左での投球も継続し、両投げを続けている。右での直球の最速はこの日更新して145キロと、既に高校生のトップレベルと遜色ない。持ち球は右が直球、カーブ、スライダー、ツーシーム、スプリットの5種類、左は直球、スライダー、カーブ、チェンジアップの4種類。左右の直球を含め、持ち球は計9種類だ(同じカーブ、スライダーでも左右で変化が違うため、それぞれ1球種としてカウント)。

 球種が9種類あると、相手も困惑する可能性が高い。試合前にコーチから指示を受け、登板する時点で右で投げるか左で投げるかを決めている。これまで左で登板し、次の回の頭から右に変えることはあったが、回の途中で左右を入れ替えるのは、この試合が初めてだった。

「両投げでプロ野球、メジャーで活躍したい」

左でも最速134キロの直球と多彩な変化球を投げ分ける【写真:イワモトアキト】

 結果的に、回の途中で変更して立て直せることが分かったのは大きな収穫だ。グラブは右投げ用、左投げ用、左右どちらでも使える両投げ対応用の3種類を準備している。将来的には「両投げできるということが分かったので、打者ごとに右左を変えることができるようにしていきたい」と目標を口にした。

 自身の右投げと左投げの違いを、原は「右は器用だから小手先でやっちゃう部分がある。左は不器用な分、体全体を使って投げられる」と分析。「右は体全体で投げられていない部分があって再現性が低く、フォームで球種が分かる時がある。左は変化球のフォームの見分けがつかずに打ちづらいと言われます」と続けた。

 両投げということは、通常よりも多くの練習が必要になる。明らかに大変だと思えるが「特に大変だと感じない」という。右投げと左投げでは体の使い方が全く違うことにも「例えば右投げ右打ちでずっと同じ体の回転をしていると腰を痛めたりすることもあります。ある意味、両方使うから片方に寄らなくていいことだと思います」と前向きだ。

 体の負担が増える中、ケアも入念に行う。登板日は冷水を浴びたり、水風呂に浸かることもある。「アイシングもしますし、マッサージを受けたり、個人的にしっかりストレッチしています」と説明した。

 今後もどちらかに絞ることなく、右投げと左投げの“二刀流”で鍛えていく考え。過去には元南海の近田豊年投手ら、数は少ないものの両投げのプロ野球選手は存在しており「両投げとしてプロ野球選手、メジャーリーガーになって活躍したいなと思っています」と夢を語る。2024年MLBドラフトでマリナーズから1巡目指名を受けた両投げのジュランジェロ・サインチェ投手のことも意識している。

 多摩川ボーイズでの公式戦は終わったが、U-15日本代表の一員として9月25日からメキシコ・メリダで開催される「ラグザス presents WBSC U-15野球ワールドカップ2026」に出場する。173センチ、69キロの体に大きな可能性を秘めた両投げの逸材は、日本一を逃した悔しさも糧に、世界を驚かせる戦いに挑む。

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