抵抗ある“成長期の筋トレ”…やってもOK? オフシーズンの効果的な鍛え方を解説

公開日:2022.10.17

更新日:2023.12.26

文:First-Pitch編集部

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成長期の子どもたちに対するオフシーズンのトレーニング

 肘内側側副靱帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)の権威である慶友整形外科病院スポーツ医学センター長の古島弘三医師は、野球上達への“近道”は「怪我をしないこと」だと語ります。練習での投球数を入力することで肩や肘の故障リスクが自動的に算出されるアプリ「スポメド」を監修するなど、育成年代の障害予防に力を注ぎ続けてきました。

 では、成長期の選手たちが故障をせず、さらに球速や飛距離を上げていくために重要なのは、いったいどのようなことなのでしょうか。古島医師は休養の重要性を訴える一方で、体を鍛えたり、柔軟性を高めたりすることも必要だと話します。この連載では、慶友整形外科病院リハビリテーション科の理学療法士たちが、実際の研究に基づいたデータも交えながら、怪我をしない体作りのコツを紹介していきます。今回の担当は貝沼雄太さん。テーマは「成長期のトレーニング」です。

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 成長期におけるトレーニングはどうするべきなのでしょうか。野球に関する世界的なトレーナーであるデイビット・シマンスキ(David Szymanski)は、成長期は「ミニチュア・アダルト」ではないため、成人と同じトレーニングではなく、選手の年齢や成長度、プレー経験などを考慮する必要があると説いています。成長期のトレーニングにはLTAD(Long-Term Athletic Development)modelという考え方があり、成長に合わせたトレーニング強度や負荷量の必要性、様々なスポーツに関わることが推奨されています。

 では、具体的にどのようにトレーニングを行うべきなのでしょうか。1週間のうち野球の練習日を週2日として、練習のない週3日はプライオメトリックトレーニング(筋肉の反射を利用して瞬間的に大きな力を発揮させる運動)とレジスタンストレーニング(いわゆる筋力トレーニング)、練習日のある週2回はインナーマッスルのトレーニングを行うことが良いとされています。

 プライオメトリックトレーニングとして紹介されているのは、メディシンボールを使用した9種類のトレーニングです。メディシンボールを使用することで下半身から体幹、上半身へと順番に力を伝達させるため、投げるや打つなどの野球に必要な動きに近いトレーニングができます。メディシンボールは2キロ~4キロを使用しますが、小学生は2キロ、中学生は3~4キロとしたほうが良いでしょう。各トレーニングは10回として2セットとし、セット間の休憩は1分~1分半としましょう。トレーニングの詳細は動画で確認してください。

 成長期に筋力トレーニングを行うことに抵抗を持つ方も多いと思いますが、世界的なトレーナーの団体であるNational Strength and Conditioning Association(NSCA)は成長期のレジスタンストレーニングに対してガイドラインを作成しており、その中で負荷量や回数を提示した上で推奨しています。10歳~12歳は負荷量を2~3キロとして10~15回を1~2セット、13歳~14歳は負荷量を3~4キロとして6~10回を1~3セット。セット間の休憩は1分~1分半としています。トレーニングの詳細は動画で確認してください。

 インナーマッスルのトレーニングとしてはThrower’s tenが推奨されています。Thrower’s tenは以前の記事「球速が6週間で1.7%向上した例も 市販ゴムチューブでできる成長期のトレーニング」で紹介していますので、そちらを参考にしてください。

 成長期のトレーニングをどのようにすべきかは指導者の皆さんも悩んでいることと思います。文中でも紹介しましたが、筋力トレーニングを行うことも可能です。また、他のスポーツを行うことも推奨されています。あと数か月でオフシーズンとなります。様々なトレーニングや他のスポーツを組み合わせることで子どもたちの能力開発が促され、春には大きく成長していることを願っています。

▼参考文献
※ Szymanski DJ. Preseason Training for Youth Baseball Players. Strength Cond J 2013; 35: 63-76.

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