結成7年で日本一も「勝利至上ではない」 甲子園4度の名将が“中学野球”に注力するワケ

文:磯田健太郎 / Kentaro Isoda

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エイジェックカップ初出場…2020年創設のSKポニー

 脱・勝利至上主義で描く中学野球の未来とは。中学硬式野球5リーグの夏の王者が一堂に会す「第4回エイジェックカップ 中学硬式野球グランドチャンピオンシリーズ」(8月26〜28日、エイジェックスタジアム・神宮球場)に、SKポニー(神奈川)がポニーリーグ代表として初出場した。監督を務めるのは、東海大や大学日本代表「侍ジャパン」、東海大菅生高で監督を務めた名将・横井人輝氏。大会での優勝ではなく「高校野球で活躍する選手の育成」を掲げながらも、強豪へと成長しつつある理由とはどこにあるのか、話を聞いた。

 横井監督は東海大菅生高で春夏4度甲子園に出場。東海大では15度のリーグ優勝、2014年には大学日本一に導き、菅野智之投手(現ロッキーズ)らを育てたアマチュア野球界の名将だ。高校・大学での指導経験を生かすべく、次なるステージとして中学野球を選んだと話すが、ポニーリーグに加入したのには、“理念への共感”があるという。「縛りがあまりなくて、これからの時代に合っていると思ったことが一番の要因です」と横井監督は明かす。

 トーナメント方式が一般的な他の中学硬式リーグとは異なり、ポニーは“リーグ戦文化”。また、1つの大会に複数チームを編成して出場できることや、リエントリー(再出場)制度もあり、より多くの選手に実戦経験を積ませることができる。そうした理念と、「高校野球で活躍する選手を育てる」ことを掲げる指揮官のビジョンが合致し、2020年にチーム創設、2021年から本格的に同リーグで活動を開始した。

「高校に繋げるための指導を常に念頭に置いているので、勝利至上主義では全くありません」。それでも創設7年目でポニー全日本選手権を制し、今回のエイジェックカップに出場。ポニーU-15日本代表にも複数人選出されるなど、リーグ屈指の強豪になりつつある。横井監督が説くのは、中学生年代に本来備わる“ポテンシャルの高さ”だ。

「中学生は、ちゃんと教えれば高校で教わることの6割はできるようになります。パワーは劣りますし成長期で故障に気をつける必要はありますが、投げ方の矯正や、戦術指導も、やり方次第でいくらでも身につきます。それらがうまく噛み合ってここまで勝てたのかもしれません」

脱・勝利至上主義だからこそ…難しい「全国大会へのスタンス」

SKポニー・横井人輝監督【写真:黒澤崇】

 実際に、今大会は1回戦で谷山イーグルス中学部(フレッシュ代表、鹿児島)を3-2で下すと、準決勝・浜松北ボーイズ(静岡)戦でも、果敢な盗塁企図や二塁へのピックオフなど、一発勝負のトーナメントでも生きる技術を発揮。走攻守の基礎だけでなく、高校以降の高いレベルにも対応できる頭脳プレーも組み込んだ、横井監督の指導哲学を象徴するシーンが多く見られた。

 一方で、難しさにも直面した。「元々大会で勝つことを求めている子たちではないので、大きい大会で勝ち上がった時に引け目を感じてしまったり、気持ちが乗らなかったりする子もいます」。浜松北戦は終盤に引き離され、2-10の大差で敗退となった。

 それでも、「勝利より育成優先」の方針を変えるつもりはない。「大会に出る以上は負けていい試合はない」としながらも、「高校野球に向けて、トーナメントの大切さや難しさを学べるいい機会になったと思います」と横井監督。目先の勝利の味ではなく、将来を見据えた指導を受けた選手たちが、高校以降でどう花開いていくのか楽しみにしたい。

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