「休憩が長い」のに都内最強 おしゃべりも許容…女子チームが“主体性”重視する理由

文:吉田三鈴 / Misuzu Yoshida

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昨年のNPBガールズT初出場…東京・江東区の選抜チーム「オール江東女子」

 普段は別々に活動する選手たちが、結束できるのには明確な理由があるという。昨年の「東京都知事杯エリエールトーナメント」で優勝し、全国大会「NPBガールズトーナメント」に初出場を果たした、東京・江東区の女子学童の選抜チーム「オール江東女子」。2005年頃に江東区軟式野球連盟によって発足し、現在小学3年から6年の女子選手27人が所属している。隔週土曜、同区内を中心に元気に活動中だ。

 2014年から監督を務める長江彰孝さんは、娘が2012年にチームに参加したことで、女子野球の世界に“ハマった”一人。初めて練習見学した際に、「なんでこんな楽しい野球をしてるんだ⁉」と衝撃を受け、帰る頃には「みんなで楽しく野球やるっていうのは、こんなに見ていて面白いんだ!」と、野球に対する概念が大きく変わったと当時を振り返る。

「女子野球は選手間、そして指導者とのコミュニケーションがスムーズ。その頃、男子チームで指導者として携わっていましたが、『僕の自転車を見るとグラウンドに行きたくない』なんて声を聞くこともあったんです。でも野球は本来、楽しくやることが大事だと気づきました」

 以来、長江監督は、オール江東女子の指導方針「楽しく・主体的に・子どもらしさを守ること」を貫いている。「ご覧のとおり、うちは休憩時間が長いです。下手したら練習より長い日も(笑)。そして練習中も、選手同士の会話時間をあえて大切にしています」

 たしかに取材中も、ベースランニングの練習をする横で、何人かはダンスに励み、おしゃべりに夢中のグループ(監督いわく“サボリーヌ”)もちらほら。だが、指導者たちが特に厳しく注意をする様子はない。

 しかしそれには、監督の明確な狙いがある。

試合の打順やポジションも選手と相談することも

選抜チームならではの関係づくりに時間をかける長江彰孝監督(中央)【写真:吉田三鈴】

 普段は別々のチームや個人で活動している選手が集まって構成される“選抜チーム”という特性上、技術練習だけを重ねても、チームとして機能するとは限らない。練習の質を高めるためにも、関係づくりに意図的に時間を使いたいからだ。

 野球の話に限らず、学校のことや日常の出来事など、雑談も含めた交流を重視。何気ないコミュニケーションの積み重ねが、互いの性格や考え方を理解する土台になると長江監督は考えている。

「ただし、仲が良いこと自体が目的ではありません。その仲の良さを野球での“支え合い”に変えられるかどうかが重要。上級生と下級生が自然に言葉を交わせる空気をつくることで、試合中の声かけやフォローもスムーズになりますから」と教えてくれた。

 また、選手の主体性を育てるために、監督は日々の練習メニューはもちろん、試合の打順やポジションについて、選手に相談することもあるという。

「指導者が何でも一方的に決めない、ということも大事。練習メニューは、事前に想定していてもその日メンバーが集まるとは限らないので、集合してから決めることが多い。今日は選手がノッカーを務めていますが、それは本人たちが志願したから。ノックをやると自分でどのコースに打つかと考えたり、力加減がわかったりもしますしね。そこは基本、任せます」

「子どもらしさを保ったまま強くなる」ことを重視

選手の“主体性”がチームの根幹を形作っている【写真:チーム提供】

 選手の選択を尊重することで、「自分たちのチーム」という意識が芽生える。そして、その結果が良くても悪くても、自分ごととして選手自身が受け止められるようになる。

「そうはいっても、監督になった頃の僕は、『こうでなきゃ』が強かった。いろいろ管理していたと思います。でも、結果が伴わなかった。子どもたちに教えられました」

 こうして生まれたのが、現在の指導スタイルだ。勝利や技術向上ばかりを求めると、子どもはどんどん“競技者”になってしまう。そこで試合前のウオーミングアップは鬼ごっこ、夏の練習では熱中症対策と称して、水風船の投げ合い、といった遊び要素も積極的に取り入れている。

「勝つために子どもらしさを削る」のではなく、「子どもらしさを保ったまま強くなる」ことを重視しているオール江東女子。そして長江監督は、保護者にも積極的に、今のわが子の姿を見に来てほしいと声をかける。

「できるだけ保護者の方もグラウンドで、子どもの様子を見てほしい。結果だけでなく、過程や成長を共有し、みんなで育てるという感覚を大切にしたい」と願っている。子どもを中心に大人も関わり、1つのチームとして育てていく。型にはまりすぎない、オール江東女子の今後の活躍に注目だ。

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