「硬式は肩身が狭い」 五輪でグラウンド消滅、松坂大輔を生んだ江戸川南シニアの今

公開日:2022.02.07

更新日:2023.12.26

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部員が12人まで減少、東京五輪で専用グラウンド失ったのが痛手に

 東京都の東部で活動する江戸川南リトルシニアの有安信吾・総監督は、80歳の今もグラウンドに立ち、子どもたちを指導する。松坂大輔投手ら、プロ野球の世界でも一流となった選手を育て、少年野球の世界をずっと見守って来た生き証人だ。「First-Pitch」では有安総監督による連載をお届けする。第1回は、100人を超える部員を抱えていた名門チームの“現在”だ。東京五輪の「負の影響」もあり部員は激減。そんな中で総監督の指導法も変化してきているという。

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 江戸川南はリトル(小学生)のチームが2008年、10年と2回、リトルリーグ・ワールドシリーズに出させてもらって、10年には世界一になったんですけども、あの頃がチームとしての最盛期だったんじゃないですかね。1984年に江戸川リトルから分かれてチームを発足させて以来、ずっと部員数は右肩上がり。江戸川区だけじゃなくて城東地区一帯の野球をやりたい子が集まってきましたから。多いときは部員がリトルとシニア合わせて100名超えて、とても見切れないと入部をお断りしていたくらいで。それが今の部員数は中学生のシニアだけで(リトルは休部中)12人ですからね。

 少子化っていうこともあって、どこのチームも部員集めに苦労しているみたいですけど、ウチの場合、部員が減った一番の原因は専用の練習グラウンドがなくなっちゃったことでしょうね。以前は葛西臨海公園に専用のグラウンドがあったんですけど、そこが東京オリンピックのカヌー・スラロームの競技会場になるっていうんで使えなくなちゃった。それで荒川の河川敷にあるグラウンドで練習させてもらってるんです。ただ公共の施設ですから、いろいろと練習内容にも制約が出てきちゃうんですね。

 10数年くらい前に、よそのチームで少年硬式野球のファウルボールが隣のサッカー場に飛び込んで大けがさせちゃったっていう事故があったんです。それ以来、硬式野球っていうのはとっても肩身が狭い。今、借りてるグラウンドはフリーバッティングはできないんです。もちろん試合をするのもダメ。

 ティーバッティングだとか、バント練習は硬式球でできるんですが、フリーバッティングは軟式ボールとか、硬式テニスボールでやらざるを得ない。子ども達にとればバッティングは一番の楽しみでしょう。それが目一杯できないんだったら、もっと練習環境の良いチームに行こうってことになっちゃうのは仕方ない。そんなこんなで瞬く間に部員が減ってきちゃいましたよ。

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