練習中にフェンスを登る園児を静観「好奇心を潰してしまう」

 他のチームの指導者が練習の視察に来た時には、年中の園児がグラウンドにある高いフェンスを登り始める出来事があったという。心配になった母親は子どものところへ駆け寄って、登るのを止めようとした。ところが、辻監督は「止めないでください」と母親を制した。

「フェンスから落ちたら怪我をするので、下で受け止められるように備えました。でも、登るのを止めませんでした。ある程度のところまで登ると、子どもは降りられなくなって、その場で固まりました。最後は力尽きて、私のところへダイブしてきました。お母さんには『もう、この子はフェンスに登らないですよ』と伝えました」

 視察に来ていた指導者たちは「同じ状況になったら、『危ないから登ったらダメ』『野球をしにきたのにフェンスに登るな』と子どもに注意した」と、口々に言った。辻監督の考え方に驚き、感心するしかなかった。

「フェンスを登るなと言ったら子どもが好奇心を失ってしまいます。1つの好奇心を潰せば、それ以外の好奇心まで潰れてしまいます。高いフェンスがあったら、大人だって登りたくなりますよ」

 辻監督の指導方針に命令や強制はない。子どもたちの好奇心を大切に育て、自ら練習する工夫を凝らしている。

「1人の子どもが練習中にグラウンドでバッタを見つけると、3人、4人とバッタに集まります。私たち指導者は、『こっちに来い』というように命令はしません。『コーチ、その練習はバッタに負けてるよー』と声をかけると、コーチは必死に子どもたちを楽しませようとします。そうすると、1人また1人と練習に戻ってきます。子どもの好奇心は大事。大人が潰したら駄目なんです」

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