得意な球種は「殺さない」 敏腕コーチの「言い過ぎない」指導…選手に与える“ヒント”

公開日:2025.05.02

文:川浪康太郎 / Kotaro Kawanami

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野球指導者・長坂秀樹氏がプロ多数輩出の富士大で投球指導

「長所は殺さないまま、短所を長所に転換してあげたい」。神奈川県の野球塾「Perfect Pitch and Swing」代表を務める長坂秀樹さんは、そんな思いで投球指導を行っている。例えば変化球の指導。得意な変化球を持つピッチャーには、その得意球の良さは消さず、むしろそれを引き立てる別の変化球を教えるようにしている。

 3月下旬、岩手・花巻市の富士大のグラウンドを訪れると、ブルペンで2年生左腕の古堅鈴之輔投手をマンツーマン指導する長坂さんの姿があった。長坂さんは普段、小・中学生をメインに教えているが、独立リーグ・長崎セインツ(現在は解散)で同僚だった安田慎太郎監督の依頼を受け、2022年からは富士大で外部コーチとして指導に携わっている。昨秋のドラフトで指名された佐藤柳之介投手(広島2位)、安徳駿投手(ソフトバンク3位)、長島幸佑投手(ロッテ育成3位)も在学中に長坂さんの指導を受けた。

 古堅投手の最大の武器はスライダー。左打者を抑えるのに長けている一方、対右打者に課題を感じていた。現状を把握した長坂さんは、右打者が嫌がると予想される縦に落ちるカーブと、横に動くチェンジアップを伝授した。

 長坂さんの独自の指導を受け、当初は戸惑いの表情も見せた古堅投手。それでも言われるがままに投げるとみるみるうちに習得し、「カーブもチェンジアップも元々投げていたけれど、どちらもオーソドックスな変化のさせ方しか知らなかった。自分の投球スタイルにはこの変化のさせ方が合っていて、これなら一番自信のあるスライダーを生かす投球ができると知られてよかったです」と笑顔をのぞかせた。

外部コーチの“独自指導”で「感覚やきっかけを掴んでもらう」

長坂秀樹氏と富士大の安田慎太郎監督(中央)【写真:伊藤賢汰】

 縦に落ちるカーブは、「トンカチを持って叩くイメージで投げよう」と例えを出しながら教えた。普段から「例え」を多用する長坂さんは「僕は○○筋を使ってとか、どこの骨がどうというような話はしません。選手本人が消化して、自分のものにしやすい言葉を選んでいます」と明かす。

 一方、横に動くチェンジアップは「人差し指の内側で弾くイメージで投げよう」とアドバイスを送って覚えさせた。投球の様子を動画で撮影し、スーパースローで確認して可視化するのも有効的な指導の1つ。長坂さんが「ピッチャーが『中指で投げています』と言っても、実際に最後までボールを触っているのは人差し指だったりするんです」と話すように、指の使い方の癖を目で見て理解することが、習得の第一歩になるケースも少なくない。

「自分は数か月に一度来る外部コーチという立場なので、感覚やきっかけを掴んでもらうくらいの気持ちです。今の子は情報をたくさん持っているので、自分から言い過ぎないよう、距離感には気をつけています」と長坂さん。“例え”や動画を駆使し、選手たちに「ヒント」を与えている。

【実際の動画】縦カーブ手首の使い方は? 敏腕コーチが大学生に伝える“リリースのイメージ”

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