変化球“使いたがる”投手に起こる悪影響 注意したい距離感「気にする子結構いる」

文:高橋幸司 / Koji Takahashi

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巨人が創設した中学硬式チーム「多摩川ボーイズ」は球数制限など投手負担に配慮

 24人の中学1年生で今年4月に正式に発足した、巨人の中学硬式野球チーム「ジャイアンツ U15 ジュニアユース」(連盟登録名:多摩川ボーイズ)が3日、東京・多摩川緑地広場硬式野球場で初の対外試合(2試合)に挑み、連勝スタートを切った。第1試合では東京城南ボーイズ(1年生)に5-3、第2試合で女子硬式エイジェックユースに5-2と快勝したが、目を引いたのが、7イニング制2試合で計14選手がマウンドに上がった“細切れ継投”。そこには硬式球を握りたてで、まだ成長段階の中学1年生に負担をかけない育成プランがある。

 昨年末の「NPB12球団ジュニアトーナメント」に巨人ジュニアで出場した“両投げ”の原悠翔選手が第1試合で先発し、そこから2試合目も含めて14選手が1イニングずつ継投した。野球日本代表「侍ジャパン」井端弘和監督(元中日、巨人)の長男・井端巧選手、DeNA・小池正晃コーチの次男・小池樹里選手ら、DeNAジュニアで同トーナメントを制したメンバーもマウンドに上がった。第1試合の4番手で登板し、2三振を奪った井端は、「ジュニアトーナメントもそうでしたが、決勝よりも初戦が一番緊張する。思い切って楽しんで投げました」と安堵の表情を見せた。

 巨人U15では肩肘の故障予防のために、試合での登板を「1イニング・25球以内」に制限している。「年間プログラムで決まっています。2イニングになる時期もあるかもしれませんが、基本的にはこの形を徹底していきたい」と、同ユース代表を務める大森剛氏(元巨人、近鉄)。それでも14人とも引けを取らない投球内容で試合を作ったことは、注目の巨人ユースチームらしいポテンシャルの高さを感じさせた。

「みんなナイスピッチング。素晴らしかった」と快投に目を細めたのが、投手コーチを務める林卓史さんだ。山口・岩国高では1993年選抜に出場し、慶大、日本生命とアマ球界の第一線でプレー。慶大助監督などを経て現在は朝日大教授を務める林コーチは、日本にいち早く投球分析機器「ラプソード」を導入するなど、データ分析研究で知られる。この日も各選手の球数を管理しながら、適宜アドバイスを送りサポートしていた。

「まずは質の良い真っ直ぐをしっかりと投げること」

ピンチを脱して盛り上がる巨人U15の選手たち【写真:高橋幸司】

 小学校から上がりたてで、軟式球から硬式球に握り替えたばかりという中学1年生を指導する上で、注意すべき点とは何だろうか。林コーチに尋ねると、「まずは質の良い真っ直ぐをしっかり投げることを目指すこと」だという。

「みんな変化球を投げたがるんです。野球ゲームの影響かわかりませんが、スライダーとかカットボールとか」。変化球は中学生から“解禁”となるが、多投することは肩肘へはもちろん、ストレートの質にも影響する。巨人U15ではラプソードを活用して回転効率95%の速球を目指しているといい、「質の良い速球がなければ、変化球も生きない。上のカテゴリーに進んで変化球を本格的に使うようになっても、真っ直ぐの回転効率に影響がないようにしなければいけません」と語る。

 もう1つの注意点は、マウンドと本塁間の距離の変化だ。小学生では16メートル以下だが、中学生になると本格的に「18.44メートル」となる。「距離が遠くなったことを気にする子は、結構います。そこで、本塁まで届かせたいからと強い球を投げると、余計に肩肘に負担がかかります。徐々に慣れていくものですし、質の高いボールを意識していれば、強く投げなくても自然にボールが行くようになります」と説明する。

 実はこの日、1番手の原は先頭打者に変化球で死球を与える“暗雲スタート“だったが、その後はストレート主体で後続を抑えて流れを作った。「やはり大事なのは真っ直ぐです。ストライク先行で、堂々と投げられる投手になってほしい」と、林コーチは球界の未来を担う選手たちに期待を込めていた。

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