体の成長が異なる子…“不平等にしない”評価基準 保護者の不満解消する「分解ドリル」

文:間淳 / Jun Aida

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日本ハムや阪神でプレーした田中聡氏「体の大きさで評価が変わる曖昧さに違和感」

 選手だけではなく保護者も納得する内容となっている。日本ハムや阪神でプレーし、引退後は指導者をしている田中聡さんは、自身で考案した「動きを分解したドリル」を活用している。現在の実力や過去からの成長を把握できるドリルは、選手のモチベーションを高め、保護者の理解にもつながっているという。

 田中さんは2003年に現役引退後、知識や技術を伝える道へと進んだ。園児から社会人まで幅広く指導し、特に東京・羽村市で運営する野球スクール「HERO-S」でジュニア世代の育成に力を入れている。

 成長期の小・中学生は体格差が大きい。そこで、田中さんは体の大きさや成長のスピードに左右されないドリルを考えた。「投げる」「捕る」「打つ」をそれぞれ細かく分解し、段階を踏んで必要な動きを身に付けていく。難易度を10段階に分けるなどし、できるようになったら進級していくイメージだ。田中さんが、この進級ドリルを考案した理由を説明する。

「ジュニア期に体の大きさで評価が変わってしまう曖昧さに違和感がありました。フィジカルに関係なく技術が評価されて、全員にチャンスを平等に与えるためには、明確な評価基準が必要だと思っています。フィジカルの差を抜きにして、運動の習熟度を把握するためにドリルをつくりました」

投げ方・打ち方の体系化で選手も成長実感…保護者にもメリット

野球スクール「HERO-S」を運営する田中聡さん【写真:間淳】

 田中さんが考案したドリルでは1つ1つのプレーを分解し、難易度がやさしい動きから練習していく。例えば、送球では指、腕、体のターン、足の動きの順で段階を踏み、最終的には全ての動きが連動できるようにする。

 遊撃手を中心に内野手で大切になる、腕をコンパクトに使うショートアームでは、大きく3つの段階に分ける。最初のステップ【1】は、ボールに指をかける感覚を覚える。的に向かってワンバウンドでボールを投げて、小さな動きで強く送球する基本を理解する。

 次のステップ【2】では、指や腕の動きと地面を蹴る動きを連結させる。用意するのは低い台。右投げの場合、左足をその台の上に乗せ、体をひねってから右足で地面を蹴り、台の上に体が乗ると同時に、コンパクトに強くボールを投げる。

 ステップ【3】では、さらに体の回転を付け加える。踏み込んだ右足を軸に反時計回りに体をターン→左足を軸にボールを投げる。送球後、左足に体重が乗り、体が左足の方向へ傾くイメージを持つと良い。

 投げ方や打ち方などを体系化すると、選手だけではなく保護者にもメリットがある。田中さんは「選手が今どの段階にいるのか保護者に説明できるので、理解してもらいやすくなります。選手はできなかったことができるようになる成長を実感できますし、保護者も子どもの進歩を見て指導者に任せることへの迷いがなくなります」と話す。

 小・中学生のチームでは、監督やコーチの起用法に保護者が口出ししたり、不満を言ったりするケースが少なくない。保護者が自分の子どもやチームメートの現在地を正しく把握すれば、起用をめぐるトラブル回避につながる。田中さんの進級ドリルにはチームの問題を解決するヒントもある。

【実際の動画】腕と下半身を連動→最後は体をターン “ショートアーム”送球が身に付くドリル

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