米国式スイングで長打激増「見違えた」 1年で全国V…61歳監督が決別した“昭和の指導”

公開日:2025.10.19

更新日:2025.11.11

文:橋本健吾 / Kengo Hashimoto

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奈良の少年野球チーム「西大寺ドリームズ」を設立し、監督を務める宮木健一氏

 全国で通用するチームに成長した理由は、子どもたちの努力と指導者のアップデートだった。今年8月に三重で開催された「エンジョイ!軟式野球フェスティバル」(旧・全国スポーツ少年団軟式野球交流大会)で、初優勝を飾った奈良の「西大寺ドリームズ」。First-Pitchでは小学生・中学生世代で全国制覇を成し遂げた指導者を取材。強力打線を作り上げた61歳の宮木健一監督は「昭和の野球だけでは選手の引き出しは増えない」と語る。

 西大寺ドリームズは奈良市の西大寺北小学校を活動拠点とし、2004年に宮木監督が設立した軟式の少年野球チームだ。21年目を迎えたチームは県内の強豪として知られる存在だったが、昨年夏からこれまでの指導方針を変化させた。

 バットを上から叩きつける打撃から、米国式の「パームアップ打法」を取り入れたことで「打撃の質は見違えるほど変わりました」と宮木監督は口にする。手首が返るのを防ぎ、体幹を使ってバットを振ることで、ボールに対し長くスイング軌道を入れ打球の角度を上げていく。「全員がホームランを打つことを目標にした」と、新たな打撃を取り入れたことで爆発的に長打が増えていったという。

 もちろん、見よう見まねの「パームアップ打法」ではない。宮木監督は“縦振り”を日本で浸透させ、オリックスの杉本裕太郎外野手ら数多くのプロ野球選手を指導する根鈴雄次さんが経営する「根鈴道場」を訪問。実際に話を聞き、身振り手振りを交えて指導法を教わった。また、ソフトバンクでスキルコーチを務める菊池タクトさんら、実績ある指導者たちの理論を学び、自ら実践し引き出しを増やしていった。

強打のチームを作り上げた「パームアップ打法」も「全て正解だと思っていない」

西大寺ドリームズの集合写真。左端が宮木健一監督【写真:チーム提供】

 生徒の保護者らには野球経験者も多く、当初は懐疑的な意見もあった。それでも、宮木監督は打撃理論を一から説明。小学生の時だけ活躍するのではなく、将来的にスケールの大きい選手になってほしい――。その思いを伝えると保護者たちも納得してくれた。

「上から打つ“昭和の指導”でもある程度結果は出ていました。監督として21年間、いろんなことをやってきました。そのなかで、やっぱり、思いっきり打ってホームランを打たせたい。体が大きくて体重がある子は昭和のやり方でも打つ子もいたが、全員がそうならない。パームアップは体幹で打つので、長打を打てる可能性は高くなります」

 チームは約1年で“強打の西大寺”に生まれ変わった。圧倒的な打撃で結果を残しているが、宮木監督は「これが全て正解だとは思っていません」と口にする。選手によって合う・合わないは必ずある。個々に合っていなければ別の方法も提案し、選手の成長をサポートしている。

「私は一番ダメなのは『俺が教えたから上手くなった』と思うこと。沢山の引き出しを選手が持っていれば将来、どこかで活きるかもしれない。言い方は悪いですが小学生の指導者は“踏み台”であり通過点。できることをやり中学生の指導者に預ける。その後は高校、大学と続いていきますので」

■「パームアップ」の参考記事はこちら

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