野球未経験の母でも「教えられる」 キャッチボールより“安全”…投げ方指導成功のコツ

巨人アカデミー立ち上げに尽力…倉俣徹さんが明かす投げ方指導の落とし穴
「軸足で立って、ステップして、腰を回転させて、腕を振って投げる」。日本の少年野球現場において、長年変わることのなかったキャッチボールの指導法は、子どもたちのコントロールの乱れや手投げの悪癖を生む原因になっているかもしれない。8月31日、野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」が開催したオンラインイベントに、巨人アカデミー立ち上げに尽力し、中学硬式チームの高崎中央ポニー監督を務める倉俣徹さんが登壇。難しい幼児・低学年の投げ方指導のコツを語った。
「足を上げてバランスを取り、ステップして、体を回転させながら体重移動し、最後に腕を振る。この4つの動作を一度に行わせる『全習法』は、未発達な子どもにとってめちゃくちゃ難しいことなんです」
そう語りかけた倉俣さん。足を上げた瞬間に軸がブレれば、ステップ足の着地点は定まらず、頭が突っ込んで腕が取り残されてコントロールを乱す。大人たちにとっては何気なく行っている一連の投球動作は、未就学児や低学年の子どもにとって、要素が複雑に混み合いすぎている。それらを一挙に教える「全習法」だと、癖がついたり、難しくて野球を嫌いになってしまうリスクがあるのだ。
そこで、こうした難題を解決するために倉俣さんが推奨するのが、動作をパーツごとに分解してマスターさせる「分習法」でのドリル指導だ。
「水泳でいえば、ビート板を足に挟んで手の動きだけを練習したり、手でビート板を持ってバタ足だけを練習するのと同じです。野球もまず『手の使い方』、次に『体の回転』、そして『後ろ足から前足への体重移動』、『腕の振り方』と分けて教えてあげる。目的がシンプルになれば、野球経験のないお母さんでも教えられるようになります」
すべてを「遊び」に…ドリル指導を成功させるコツと具体例

米国でスポーツ科学を学んだ経験を持つ倉俣さんが、この手法に行き着いたきっかけは、野球大国であるキューバや米国の指導法、そしてサッカーJリーグ・FC東京のドリルブックだった。海外やサッカー界では指導の標準化が進み、誰が教えても同じ効果が出るシステムが確立されている。
「日本の野球には教本がなかった。だからまず教科書を作る必要があったんです。全て翻訳して、私の長男が小1の頃に試したところ、うまくいきそうだったので、ジャイアンツアカデミーで5歳から12歳までの子に落とし込んでいきました」と倉俣さんは振り返る。
分習法を成功させる最大のコツは、「遊び要素」を交えていくこと。同じドリルは5~10回程度にとどめ、距離を変えたり標的に当てさせたりして変化をつける。時間を10~15分程度で区切ることで、子どもの集中力を切らさずに自然と動作が身についていく。
ドリルの内容も極めてシンプルなものがいい。例えば、手の使い方を覚えるドリルであれば、ボールを持って肘を肩の高さに保ち、言葉に出しながら腕を「くねくね」と柔らかく動かし、最後は「シュッ」と投げる。専門用語は使わず、擬音や擬態語で動きを表現することで、小さい子たちもイメージしやすくなる。
「(運動神経の基礎が作られる)5歳から8歳のプレゴールデンエイジは、見よう見まねで簡単な動作を吸い込む時期。理屈ではなく、ポイントだけを伝えて真似させればいい。教える側が話をしすぎず、見て真似できるお手本を見せることが一番の近道です」
長年の「当たり前」を一度解きほぐし、要素を分解して届けること。それこそが、令和の少年野球において子どもたちを野球好きにし、確実に上達させるための最適解だ。
読んで理解したら、次は動画で習得する
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