大阪桐蔭で2度甲子園…生島峰至氏は野球スクールで100人超の子どもたちを指導
「野球では下半身が大事」とよく言われるが、それを子どもたちにもわかりやすく伝えるにはどうすればよいだろうか。大阪桐蔭高、同志社大、西濃運輸で活躍し、現在は野球スクールで主に小学生を指導する生島峰至(いくしま・たかし)さんは、野球以外の日常生活での動きを通して「形と順番を伝えると、理解してもらいやすい」と語る。
奈良県出身の生島さんは、大阪桐蔭高では、高校通算33本塁打の強打の外野手として2度甲子園に出場。同学年には中田翔内野手(中日)、岡田雅利捕手(西武)、1学年下には浅村栄斗内野手(楽天)らがいた。その後、同志社大、西濃運輸とアマ球界の第一線を歩み、2018年に現役引退後はベースボールアドバイザーとして、野球スクールやグラブメーカーの運営などにあたっている。
生島さんが手がける「BT野球スクール」では大阪、名古屋、三重・四日市を拠点に、主に小・中学生や野球初心者への技術指導にあたる。「これまで指導者や先輩たちからいただいた知識や技術を、僕の中に留めておいたまま、別の仕事に就くのはもったいないと感じました」。“安定した”社業を辞め、スクールを立ち上げたのは2020年。コロナ禍の最中でさまざまな障壁はあったが、現在では100人を超す選手の成長を手助けしている。
中でも全体の3分の2と多いのが小学生だ。「中学生を越えてくると、体のクセも修正しにくくなります。それまでに良い形を身に付けることが重要」と生島さん。もちろん、限られたスクールの指導時間内だけで上達するわけではない。スクール以外の時間をどう過ごしてもらうかも重視し、自宅でできるドリルやトレーニングを、トレーナーと共に考案し選手たちに伝えている。
ドリルには、個々の課題に応じたものもあれば、全員共通のものもある。重視するのは「形と順番」。小学生でも理解しやすく、取り組みやすいように、「なるほど」と感じてもらえる言葉で伝えることを心がけるという。
日常生活で体をどう動かしているか…初歩的なところに気づけるかが重要
例えば、打撃でも投球でも、力を発揮する瞬間は適度に腕が曲がっていた方がパワーを発揮しやすいのは、大人であれば感覚的にわかる。ボールを打つ瞬間、腕が伸び切ってグリップが体から離れた状態だと、ドアスイングになり力が伝わりにくい。
この原理を子どもに伝えるにはどうするか。まずは野球以外のことに置き換えて語る。例えば「腕相撲をするときに、腕を伸ばしてはやらないよね」「重たい段ボールを持つときに、体の横で腕を伸ばして抱えようとしても、持ちにくいよね」というようにだ。
腕が曲がった状態が良いことを理解してもらった上で、次に、その“形”を作るための“順番”をどうするか説明していく。
・腕が伸び切っている時は、背中側の肩甲骨も開いている
・つまり、腕が曲がった状態をつくるには肩甲骨は閉じたほうがいい
・ただし、肩甲骨だけ意識的に閉めようとすると、首周り・肩周りが力んでしまう
・そこで下半身の骨盤に意識を向ける。肩甲骨は骨盤と動きが連動している
・骨盤を立てることで、自然に肩甲骨を閉じることができる
小学生には肩甲骨や骨盤という言葉がまだわかりにくい場合もあるため、時には体に触れて「この部分」と伝えながら教えていく。この形と順番がわかれば、下半身と上半身は連動しており、野球では「まずは下半身が大切なんだ」というのが理解しやすくなる。
「速い球を投げる、打球を遠くに飛ばすには、技術以前に、まず体の使い方が根本的なスタートになります。運動会の徒競走でも、“よーいどん”までの構えがまずは大事で、そこでいい形が整っていなければ速く走ることはできません。その土台の部分の重要性を、スクールでも伝えるように心がけています」
日常生活の中で、人はどう体を動かしているのか。そうした初歩的なところに気づけるかどうかで、投げ方・打ち方・走り方の成長度合いは変わる。
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