知的障害がある球児も甲子園に… 「どうやればできるか」に挑戦する教諭の思い

大人が可能性を潰さないように「どうやればできるかを考えよう」

 教員生活34年目の久保田さんは、これまで知的障害のある子どもたちと経験した成功、失敗、苦労、喜びなど全てを踏まえ、1つのモットーにたどり着いている。それが「どうやればできるかを考えよう」だ。

「子どもたちの障害や理解度の程度に差があるのは事実ではありますし、硬式球を使うことが危険だと心配する気持ちも分かります。ただ、それはやり方次第。硬式球でのキャッチボールが危険であれば、まずはネットスローから始めて、ある程度できるようになってからキャッチボールに進めばいい。打席に立った後にバットを投げたら危ないというのであれば、打席の横に円を描いて『バットはここに置いてから一塁へ行きましょう』と言えば、子どもたちはそうします」

 何かをやりたいという子どもの意欲をサポートせず、「できない」「できるはずがない」と経験させずに済ませるのは、教える側にとって容易い選択だ。だが、大人が「どうやればできるかを考える」という発想を持つだけで、子どもたちには「できる」「できた」という経験が積み重なり、大きな自信を育むことになる。

 久保田さんには目標がある。まず年内に「甲子園夢プロジェクト」の練習会を、健常の高校球児と合同で行うことだ。「合同練習会の次には、ぜひ練習試合をできたらと思っています」。来年には、現在勤務する都立青鳥特別支援学校として東京都高野連の加盟を目指すため、申請準備にも取りかかる予定だ。もし加盟が承認されれば、連合チームとして都大会に出場できる可能性が見えてくる。そして「最終的には全国の特別支援学校が各地で硬式野球部を作って高野連に加盟し、地方予選に出場するまでの道を作っていきたい」と話す。

「パイオニア精神を持って進みたい」と目を輝かせる久保田さんは、その想いを1冊の本にしたためた。それが『甲子園夢プロジェクトの原点』(大学教育出版・10月15日発売)だ。活動が立ち上がるまでの日々が綴られた著書には、ソフトボールを指導していた時に知的障害のある子どもたちと交わした実際のやりとりを、きれいごとだけを抽出せずに赤裸々に記している。

 活動は始まったばかり。壮大すぎる夢という声も聞こえるが、それでも「どうやればできるか」を考えながら、自身も一歩ずつ前に進んでいく。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

久保田浩司さん著書『甲子園夢プロジェクトの原点』
発行:大学教育出版(https://www.kyoiku.co.jp
発売日:2001年10月15日
定価:1800円(税別)

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