都立青鳥特別支援学校教諭・久保田浩司さんが記した「可能性」の物語
「甲子園夢プロジェクト」をご存じだろうか。知的障害のある球児も甲子園を目指すチャンスが得られるようにサポートしようという活動で、2021年3月6日に発足。発起人として立ち上がったのは、東京都立青鳥特別支援学校主任教諭の久保田浩司さんだ。(2021年10月4日、Full-Count掲載)
日体大では硬式野球部で白球を追った久保田さんは、都立高校で硬式野球部の監督になりたいと願い、教員採用試験を受験。見事合格したものの、最初に赴任したのは養護学校(現在の特別支援学校)だった。養護学校の教諭としてキャリアを重ねる中で、知的障害のある子どもたちにソフトボールを指導し始めると、生徒たちが持つ可能性に驚かされたという。
「生徒たちの中には、とてもレベルの高い選手もいました。2006年には健常者のチームに勝利したほどです」
知的障害があるからルールは理解できない。バットとボールを使うなんて危険だからできるはずない。そう決めつけているのは、周りの大人たちなのではないか――。そう強く感じたという。
ソフトボールをする生徒の中には野球が大好きで甲子園に憧れる子が何人もいた。そして自身の胸の奥には「生徒たちと一緒に甲子園を目指したい」という想いが消えぬままある。久保田さんは新設校で硬式野球部を作ろうと奮闘したが、それも叶わず。だが、熱意が消えることはなかった。
縁あって2011年から8年間、千葉・柏に拠点を置く社会人硬式野球クラブチーム・YBC柏で監督を務めた。クラブチームで指揮を執る一方、特別支援学校に通う子どもたちが甲子園出場にチャレンジするチャンスを与えたいという想いは募るばかり。「どうしたらいいだろう」という気持ちを周囲に相談し、アドバイスを受けるうちに1つのアイデアが形作られた。
甲子園に憧れる知的障害のある子どもたちの想いを学校で叶えられないなら、学校外の活動として全国の硬式野球をやりたい知的障害のある子どもたちを集めてみよう。
こうして始まったのが「甲子園夢プロジェクト」だった。